負けない
星屑肇
負けない
春の訪れと共に、新しい季節を迎えた高校の男子バスケットボール部。壮大な体育館の中で、チームメイトたちが声を合わせて練習に励む姿は、彼らの青春そのものであった。キャプテンのユウスケは、チームを引っ張る一方、彼自身の内に秘めた不安と戦っていた。
昨年の地区大会で、ユウスケはチームを準決勝に導いたものの、最後の瞬間に敗北してしまった。その悔しさが彼の心を引き裂き、今年こそは絶対に勝ちたいという強い思いを抱く一方で、そのプレッシャーがますます大きくのしかかっていた。
「ユウスケ、どうした?いつもより元気がないぜ。」と、彼の親友であり、チームのエースプレイヤーのタカシが声をかける。季節の温かさの中、ユウスケは思わずため息をついた。
「昨年のことが頭から離れない。勝ちたい気持ちが強いのに、ゆううつだ。」
タカシは彼の肩を叩き、「負けたことを恐れるな。勝つためには、まず自分たちのプレーを楽しむことが大事だ」と励ます。確かに、タカシの言う通りだ。ユウスケは心の中で葛藤しながらも、少しずつその思考を受け入れようとした。
春の大会が近づくにつれ、練習はますます厳しさを増していくが、ユウスケたちの団結力も高まっていた。彼はタカシや他のメンバーたちと共にトレーニングを重ね、自信を少しずつ取り戻すことができた。
そして、いよいよ大会の日を迎えた。ユウスケは大きな体育館のコートで、緊張と興奮が入り混じる中、仲間たちとオーダーされたラインアップに並んだ。彼の心臓はバスケットボールの生き様と共鳴していた。
試合が始まると、相手チームは強力なディフェンスを展開し、ユウスケたちは思ったようにシュートを決められずに苦しむ。しかし、彼は焦らず、仲間と共に連携を高め、徐々に自分たちのペースに持ち込むことができた。点差は少しずつ縮まり、会場の応援も彼らの後押しとなった。
後半に差し掛かる頃、ユウスケはふと去年の試合を思い出した。勝利を目指すあまり、仲間の声を無視して自分だけでプレーしていた自分がいた。その反省から、今はチーム全体を意識し、助け合い、全力を尽くしている。
随所で銘を制すと、チームは一瞬の隙を突いてリードを奪う。時間が経つにつれ、焦りや恐れはどこかに消え、「負けない」という強い気持ちが心を貫いた。
試合の終わりが近づき、ユウスケはボールを持ち、リングへ向かって突進した。ゴール近くで彼は迷わずバスケットを狙い、鮮やかにシュートを決めた。その瞬間、歓声が体育館に響き渡り、仲間たちが彼を抱き寄せた。
試合の最後のホイッスルが鳴り響くと、ユウスケたちは歓喜の渦に巻き込まれた。勝利が訪れたとはいえ、彼の心には安堵と感謝の気持ちが溢れていた。心の奥では、彼が負けたことあかされなかった「負けない」気持ちが勝利を導いたのだ。
試合後、ユウスケはタカシに微笑みかけた。「ありがとう。みんながいるから、俺は今の自分を信じられたよ。」
タカシは頷き、「これからも一緒に負けない限り、進もうぜ!」と返した。青春は、仲間との絆を深めながら続いていく。勝利よりも大切なものがある。それを痛感した春の日だった。
負けない 星屑肇 @syamyu
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