先生の秘密はワインレッド

伊咲 汐恩

第1話 同窓会のハガキ



「キミはまだ子どもだよ」



 ――大学四年生の就職活動が落ちついた夏のある日、高校の同窓会のハガキが届いた。

 それを片手に思いだす。

 三年生の夏休み直前に、担任の久保田先生にフラれてしまったときのことを。



 卒業式に撮ったツーショット写真。

 いまでも机の上にかざってある。

 彼はワインレッドフレームの眼鏡でスーツ姿。隣に泣き顔の私なんてダサいけど。



 当時の彼は数学担当だった。

 わからないことは放課後マンツーマンで教えてくれたし、友達のことで悩んでるときは親身になって話を聞いてくれた。


 次第に感情の変化があらわれて告白したけど、眼鏡のレンズに映っていたのは教え子のひとりの私。

 身も心も一人前の大人だと思っていたけど、25歳の彼にはきっと子どもにしか見えなかったんだよね。


 もし同窓会で会えるのなら、卒業式以来の再会に。


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