でっっかいイモムシかわいいね!!
@peeeeeeru
でっっかいイモムシだ!
今、俺の目の前で、腕くらいのサイズのイモムシが腹脚でのっそのっそと動いてる。白いぱや毛がふよふよしててかわいい。こっちに寄ってきた。つぶらな黒い目玉でじっと見上げてきやがる。腹ぺこなのか、それとも単に人懐っこいだけなのか。いや、自然個体にゃありえねぇ人馴れっぷり。やっぱ、こいつ、飼われてたんだろう。だが、こんなもん、どう考えても違法個体だ。今時、オオムラサキの巨大種、それも幼虫段階でここまででかいのはまず野生じゃ無理。申請出して飼うやつはこんなとこに捨てない。ただの厄介物だ。近所に通報されりゃ俺まで面倒食らう羽目になる。
やれやれと息をついて、しゃがみ込んだ。手のひらをそっと差し出してみる。俺の差し出した指先に、やわこい足がちょんと触れた。もに、もに。手にまとわりついて、のろのろ這い上がってくる。なんだこいつ、警戒心ゼロ。へちょへちょの体は妙にぬめっとして、細かい毛がくすぐったい。体温に似たぬくもりが手のひらにじわっと伝わった。振り払うのは簡単だが……このまま捨てたら、まあ、死ぬだろうな。弱ってるし。幼虫のエサは限られてるしな。適当に草突っ込んだって食うわけがねぇ。
「……しゃーねぇ、仮だ、仮。ちょっと預かってやるだけだかんな」
独り言ちて、そっと持ち上げた。ぐに、と腹がたわんで、幼虫がくい、と俺の腕に巻きついてきた。わかってたがやべぇ、重い。ちゃんと重いぞこれ。小型犬サイズってのは伊達じゃない。こんなの本気で飼ったら、ベランダどころか部屋一個潰れる。帰ったらまず箱だ。仮住まいにするダンボールくらいならある。問題はエサだな……オオムラサキは基本、エノキの葉食い。それも新芽じゃなきゃ駄目だったはず。エノキなんて、うちの近所に生えてたか? いや、大学の裏庭に何本かあったっけ。あとで確認して、拝借するしかねぇな。
やれやれと肩を竦め、懐からスマホを取り出した。念のため写真を一枚撮って、保存。これで後で、専門の知り合いにでも聞ける。やっぱり種類確認しとくのは大事だ。見間違いだったら笑えねぇしな。画面の中で、幼虫はもに、と身じろぎした。特徴的な角がぴょこりと揺れる。その顔、妙に愛嬌がある。つい苦笑いした。
「名前は……まあ、つけると情がわくからな……やめとくか」
そう言いつつも、脳裏に浮かぶ『もに』『もち』『ぷに』、情けない言葉たち……まずい兆候だ。俺はこういう生き物に情が移りやすい性分だって、わかってるのに。もにもにうごうご、いまにも溢れそうな巨体の幼虫を両手に抱え、家路を急ぐ。事情が事情だ、下手に人に見られたくはない。心なしか、幼虫の腹がぎゅるりと鳴った気がした。エノキ、早めに調達せにゃだな。
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