“視える力”では届かない心に、少年は踏み込む

霊的な怪異を扱いながらも、真に描かれているのは“人の心の痛み”そのものでした。

主人公が抱える「視える力」は、特別でありながら万能ではなく、むしろ“届かないもどかしさ”を感じさせてくれます。
怪異そのものが恐怖や謎として存在するだけでなく、人間の「後悔」や「傷」と密接に結びついている点が印象的で、
単なるホラーでは終わらない奥行きを感じました。

誰にも言えなかった想い。信じてもらえない現実。
その中で“隣に立ってくれる仲間”の存在が、どれほど救いになるのか──
静かで切実な描写が、青春の光と影をやさしく照らしています。

恐怖や不安だけでなく、「祈り」や「希望」がじんわりと残る読後感。
心に静かに刺さる、そんな物語でした。

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