TS美女、中高一貫女子校を征服す

わらまる

プロローグ

第1話 見た目は女!中身は男!!!

突然だが、自分はこの世界でトップクラスにレアな人間だと思う。なぜなら、があるからだ。佐藤雄馬さとうゆうまという、持病のせいで19歳で死んだ自分の記憶が。

俺はに生まれ変わった瞬間から今の今まで、ずっと佐藤雄馬としての人格及び記憶を有したまま生きてきた。いうなれば、俺は完全な自我を保ったまま転生したのだ。それも美女として。 


…そう、女子だ。俺は女子として生まれ変わったのだ!!

思春期真っ盛りの男子たちなら一度は抱いたであろう、異性の体への興味。俺は奇跡的にもそれを好きなだけ味わえる状態になってしまったというわけだ。


もちろん、女子の体に生まれ変わるだけでも男子の魂にとって限りない喜びであることに異論はない。だが、素晴らしい点はそれだけではないのだ。

女子として生きる俺は、自分の体を楽しむだけでなく、他人の体も楽しむことができる!!

中学校の修学旅行ではクラスメイトの裸を真正面から拝めたし、家族旅行先の温泉では年上のお姉さんたちの体を見たいだけ見ることができた。どれだけ女性に視線を向けていようと、男性がそれを行うことに比べたら格段に怪しさも下がる。

パッと思いつくだけでも、こんなにメリットがあるのだ。デメリットとしては生理があるが、俺にとってこのメリットはデメリットを確実に上回る。

あぁ、女体のなんと素晴らしいことか!


きっと、長い時間を病床で過ごした前世の俺に、神は憐みの目を向けてくれたんだ。だからこうして、前世の記憶を持ったまま女子に生まれ変わらせてくれたに違いない。それも、スタイルも顔もいい完璧な美女に育つ遺伝子を持った最強の女子に!


そんな最強の女子の名は東雲怜奈しののめれいな。つまり、俺は佐藤雄馬であると同時に、本来は東雲怜奈なのである。もちろん俺はこの15年間、親を含めた周囲の人間に一度たりとも前世の記憶があることを匂わせてはいない。両親も、そして可愛い可愛い妹も、俺のことを東雲怜奈として認識しているはずだ。今後も俺は正体をバラすつもりはないし、バラしたくもない。こんなにラッキーなことはないからな。


とまあ、そんな風に俺は15年間正体を隠して生きてきた。そして今日、俺は新たなステージに進むことになる。


「よし、準備オッケー!」


俺はフローラルな香りに満たされた自室の中で、鏡に映る自分の姿を見て満足げに微笑む。

白を基調としたブレザーを羽織り、スカートのシワを伸ばし、緩く巻いたポニーテールを結び直した今の俺はまさにJK。

そう、俺は今日女子校に入学するのだ!

 

父親の転勤を機に、俺たち東雲家は1年前にこの地に引っ越してきた。そのタイミングと、俺と妹の進学タイミングが丁度噛み合ったので、俺たちはこの近くの学校に進学することになったのだ。

進学先は天嶺てんれい学園中等部、及び高等部だ。厨二病な空気を感じるイカつい名前の学校だが、偏差値は高い優秀な学校である。もちろん妹が中等部、俺が高等部に進学する。

また、中高一貫なので俺は一般生ということになる。だから内部生の人たちとどう関わればいいのか心配なところもあるが、「まあなんとかなるかぁ」と楽観することにした。妹はその点羨ましい。ほとんどの中学生は、みんな「初めまして」だろうし。


「っと、そろそろ行かないと」


いつのまにか準備に時間を使っていたようだ。時計の針は8時10分を指している。入学式は8時40分スタートだ。あまり時間の余裕はない。まあ、幸せなことに学校は家から歩いて10分のところにあるので遅刻することはないだろう。


そんなことを考えつつ、俺は買ったばかりのスクールバッグを右肩に掛け、2階の自室を出て階段を降りる。

道中、隣の部屋でまだ支度をしているのであろう妹に声をかけることも忘れない。


里奈りな〜!もうそろそろ行かないとだよ〜!」

「はーい!あと24秒待って!」

「なんて正確な時間指定なんだ…」


階段を降りる途中、背中越しに聞こえてくるのは聞き慣れた妹の声。扉の向こうからドタドタ動く音が聞こえてくるあたり、相当急いで支度しているらしい。


「んー、ローファーはやっぱり動きにくいな。可愛いし仕方ないけど」


先に玄関に着いて出発の準備を完了させた俺は、手鏡で前髪を直しながら妹を待つ。

いやはや、我ながら素晴らしい御尊顔だ。

ぱっちり二重。キリッとした目尻。筋の通った高い鼻。しっとりした唇。シュッとした輪郭。

どこをとっても100点のビジュアルである。

神様、お母さん、お父さん。素晴らしい遺伝子をありがとう。そして欲張るのであれば、もう少し胸が欲しかった…!!

今の俺の胸はBカップだ。まだこの後も成長するだろうが、元男的には巨乳を好きなだけ揉んでみたいという欲がある。

…その点、今階段を降りてきた妹はスゴイ。


「はぁ、はぁ。姉さんお待たせー!…はぁ」

「お待たされておりました」


膝に手をつき乱れた呼吸を整える我が妹、里奈。

俺の顔が父親似のカッコいい系だとすれば、妹は母親似のザ、可愛い系だ。

少しだけ垂れ目の優しい目。もちもちした頬。サラサラのショートカットの髪。そして中学1年生にして、胸のサイズはD寄りのCである。ブレザーの上からでもその膨らみが分かるほどだ。

悔しい。とても悔しいが、それと同時に誇らしい。俺は合法的に中1女子の大きな胸を見ることができるのだから……おっと、これ以上はやめておこう。

何にせよ、里奈は俺の可愛い妹であり、最愛の妹であり、めちゃくちゃ大好きな妹だ。里奈には彼氏なんて作らせない。ずっと「姉さん大好きー!」な可愛い妹であってもらわねば…!!


「よし、支度もできたみたいだし行くとしますか」

「うん!レッツゴー!」


両親は仕事をどうしても休めず、朝から仕事に行っているため入学式には出席できない。

だから家に残っていたのは俺たちだけだ。


俺は里奈を先に外へ出し、扉の鍵を閉めながら家を出る。

鍵の閉め忘れは致命的だからな。しっかり確認しないと。


「姉さん、早く行こーよー」

「里奈が遅いからこうなってるんでしょーが。もう行けるよ。…あ、リボンずれてるじゃん」

「ん?あっ、ホントだ!」


鍵を閉めたことを確認し終えて振り返った時、俺は里奈の首元の赤リボンがずれていることに気づいた。俺はそれを直してあげながら、里奈の背中を押して歩道へと導く。

ちなみに、中等部も高等部の制服のデザインは基本的に同じなのだが、中等部はリボン、高等部はネクタイをつけるという違いがある。

    

俺が里奈のリボンを真っ直ぐに直すと、里奈は俺の顔を見ながら笑顔で尋ねてきた。


「姉さんは入学楽しみ?」

「もちろん。めちゃくちゃ楽しみだよ。里奈は楽しみじゃないの?」

「ううん、私も楽しみ!いっぱい友達作りたい!」

「ははは、沢山できるといいね」

「うん!」


俺は里奈の頭を撫でながら道を歩き続ける。

渦巻く下心を心の中に隠して。

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