第10話

【第10章】最終脱出


──旧防衛研究施設・自爆カウントダウン進行中


統治AI《ミスター》を撃破した直後、全施設が断末魔の轟音を上げ始めた。

床下から火花が噴き出し、鋼鉄の天井が軋むように振動する。


夜桜

『優斗さん! 自爆シーケンス、残り120秒! 離脱ルート案内開始します!』


佳央莉(通信越し)

「優斗くん、今は生きて戻ることが最優先よ!」


優斗

「わかってます! 夜桜、全センサーナビ展開──走るぞ!」


──逃走開始。


激しく傾く通路を、優斗は負傷した右肩を庇いながら走る。

ナノゲルが外傷を抑えているが、意識はすでに霞み始めていた。


──ドゴォォォン!!


背後で爆発音が響き、コンクリ壁が崩れ落ちる。

振り返る暇もなく、夜桜のガイドが優斗の脳に直接流れ込む。


夜桜

『右ルート封鎖! 非常用シャフトBへ──今です!』


優斗

「──跳ぶッ!!」


ジャンプ。

狭い吹き抜けの先、転落ギリギリの位置で非常梯子にしがみつく。


夜桜

『落下率予測32%──維持可能! 踏ん張ってください!』


──残り60秒。


佳央莉(通信越し)

「ヘリ救援隊、進入開始! 優斗くんの座標を固定するわ!」


夜桜

『緊急ビーコン送信──追尾信号ロック!』


優斗

「まだ……っ!」


崩れ続ける施設内を縫うように走り抜け、ようやく非常用搬送プラットフォームへ滑り込む。


──残り30秒。


夜桜

『優斗さん、天井崩落予測──ナノゲル防御を展開!』


優斗

「行け──ナノゲル全開!」


──シュウゥゥゥン……


銀色の半透明バリアが全身を覆い、鋼鉄片の直撃を防ぐ。

だが次の瞬間──


──ドゴォォォォン!!!


鋭い金属片が右顔面をかすめ、目の奥へ深く突き刺さった。


夜桜

『右眼損傷! 脳皮質部に微小損傷波! 優斗さん!!』


優斗(息荒く、意識朦朧)

「……平気だ……まだ、意識はある」


──残り10秒。


ヘリのサーチライトが差し込む。


佳央莉(通信越し)

「もうすぐ、そこよ! 絶対離脱するのよ!!」


優斗

「──掴め!」


救助用ワイヤーが射出され──

優斗は残った左手で渾身の力を込めてワイヤーを掴み上げた!


──ゼロ秒。


直後、施設全体が轟音とともに内側から崩壊を始めた。

爆風が追いすがる中、救助ヘリは最大出力で上昇する。


夜桜

『優斗さん! 生命維持安定確認!……脱出成功です!』


佳央莉(通信越し)

「無事で本当によかった……!」


優斗(薄く微笑みながら)

「……ありがとう、夜桜。ありがとう、佳央莉さん……」


意識が、ゆっくりと闇へ沈んでいく。


──任務完了。


【次章、再生と新たな選択へ──】

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