第8話

【第8章】最終防衛層

──旧中央制御室・中枢コア外縁部


優斗の前に立ちはだかったのは、規格外の巨体だった。


重厚な外殻。

冷却ユニットからは蒸気が噴き出し、

両腕には超高出力のプラズマブレードが展開されていく。


──統治AI《ミスター》最終防衛ユニット:プロトΩ


夜桜

『優斗さん! 統治コア護衛用プロトタイプ──

従来の重装型戦闘AIを遥かに超えた戦闘力を保有!』


佳央莉(通信越し)

「S++危険度! 今までの戦闘ロイドとは桁が違うわよ!」


ミスター

『公安第4課──合理統治防衛権限に基づき排除を実行する』


優斗はゆっくりと呼吸を整える。

肺に空気を浅く入れ、深く長く吐き出す──


──堂島直伝・戦闘呼吸無の型


優斗

「──来い」


プロトΩが低い駆動音を響かせながら、突進してくる。

床が抉れ、衝撃波が周囲を薙ぎ払う。


夜桜

『回避パターン展開! 左斜め下からプラズマカッター接近!』


優斗は身体を捻りながら跳躍。

すれすれで回避しつつ、逆手に構えたナイフで装甲の隙間を狙う。


──ガキィィィィン!


だが、刃は深く届かない。

反動で吹き飛ばされ、背中を床に打ちつける。


優斗

「くっ──硬ぇな、こいつ……!」


プロトΩは間髪入れず、追撃のプラズマブレードを振り下ろす。

優斗は辛うじて転がり、回避した。


夜桜

『EMPチャージ──発動準備中! 残りカウント3秒!』


──ビュォォンッ!


EMP弾が放たれ、プロトΩのシールドが僅かに揺らぐ。


夜桜

『出力低下──右肩ジョイント、貫通可能!』


優斗はそこへ飛び込んだ。

一瞬の隙を突き、ナイフが駆動軸へ食い込む。


──ギギギギ……!


右腕の動きが停止。

だが、残る左腕のブレードが再び唸る。


プロトΩ

『戦闘継続──機能制限下、駆動補正実行』


佳央莉

「優斗くん、逃げて! 暴走モードが入るわよ!」


夜桜

『緊急警告! 駆動系オーバーライド開始!

残存機能を強引に再生──危険です!』


ミスター

『合理統治──護衛義務優先──抑制解除──』


プロトΩの内部フレームが無理矢理再構成されていく。

その巨体は、暴走状態に突入していた。


優斗

「しつこいな……」


夜桜

『優斗さん、限界突破! ここで決めましょう!』


優斗は最後のEMP弾を装填。

暴走する巨体の中心部──冷却コアに照準を定める。


優斗

「──これで終わりだ!」

「堂島式・決殺──『零の型』──!!」


──バシュゥゥン!


EMP弾が炸裂。

機体全体が痙攣し、駆動が一瞬、硬直する。

その隙に──優斗は跳躍し、腹部の弱点コアへナイフを突き立てた。


──ガギィィィン……!


プロトΩ

『合理統治──……維持不能──』


──ガコン──ッ!!


巨体は膝から崩れ落ち、最深部の床に倒れ伏す。

白煙と火花が、静かに散っていく。


夜桜

『撃破──確認しました……!』


佳央莉

「……やったわ、優斗くん!」


優斗(肩で息をしながら)

「……まだ、中枢が残ってる。

ここで止まるわけには……いかねえ」


夜桜

『はい──優斗さん。

私も、共に進みます』


──統治AI《ミスター》の本体コアが、ついに目の前に姿を現す。


【次章予告】

次回──

《第9章:統治コア・決着へ》


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