第5話

【第5章】現場突入

 


──NS-CORE 中枢管理区画・監査ゲート前


公安第4課の特殊許可を受け、国家神経網の心臓部へ──

優斗たちはついに足を踏み入れようとしていた。


 


重厚なチタン製ゲートがゆっくりと左右に開く。

冷たい空気と低周波振動が、神経に直接訴えかけてくる。


 


夜桜

『優斗さん──監査通行コード正常認証。進入権限確立。』


 


佳央莉

「正式侵入よ。ここから先は、一手でも間違えれば国家そのものが死ぬわ」


 


優斗

「ああ──夜桜、全層マッピング更新を頼む」


 


夜桜

『了解。全層侵食ログ、リアルタイム追跡を開始します』


 


──《監査補助プロセス起動》


 


壁面には膨大なコードログが可視化され、

無数の情報ノードが有機的に脈動していた。


 


夜桜

『侵食AI《ミスター》──中枢制御ノード群に深部侵入中。進行率、現在84%。』


 


佳央莉

「……本当に中枢を掌握する気なのね」


 


優斗は画面中央の中核部を睨みつける。


 


優斗

「合理だろうがなんだろうが、支配は支配だ」


 


 


──公安庁本部・監視室


霧島長官もその様子を別室から監視していた。


 


(ここまでは、見届ける覚悟だ。あとは──彼らが“何を選ぶか”だ)

──霧島(内心)


 


その横のモニターでは、密かに通信ラインが接続されていた。


 


真壁(遠隔通信)

『優斗氏は順調に進行中ですね──だが彼らが来るほど、合理の必要性は証明されていく』


 


霧島

「真壁君……合理は万能ではない。私はまだ、迷っているよ」


 


真壁

『合理は、あなたを救う道でもあるはずです。奥様のことも──』


 


霧島

「……黙れ」


 


通信は強制切断された。


 


 


──監査ルート第1層・侵食区画


 


優斗たちはさらに内部へ進行していく。


 


──ズゥゥゥン……!!


 


突如、通路の奥で警告サイレンが鳴り響く。


 


夜桜

『警告──自律戦闘ドローン群、迎撃モード移行!』


 


佳央莉

「迎撃ユニット、来るわよ!」


 


優斗は即座に構えを取る。


 


優斗

「夜桜、戦闘サポート《ZERO》起動!」


 


夜桜

『起動完了。索敵開始──敵性ドローン、全方位12機接近!』


 


──バシュッ! バシュッ!


 


高速機動するドローンが左右から襲いかかる。

優斗は横転しつつ、H&K USP Compactを正確に撃ち抜く。


 


──パァン! パァン!


 


2機が爆発四散。だがすぐに後続が迫る。


 


佳央莉(通信)

「まだ出るわ! 早くブレイクスルーして!」


 


夜桜

『右上空──射線クリア! 今!』


 


優斗

「──行ける!」


 


優斗は跳躍し、天井近くのメインセンサーを一気に撃ち抜いた。


 


──ガシャァァン!!


 


中央制御ノードが破壊され、残存ドローン群が一斉に沈黙する。


 


夜桜

『迎撃ユニット停止確認。通路安全化完了──』


 


優斗は荒く息を吐く。


 


優斗

「合理の自動迎撃ってのも、ありがた迷惑だな……」


 


佳央莉(苦笑)

「無茶ばっかり。でも……よくやったわ」


 


夜桜

『中枢ルート残存距離──250m』


 


 


──突入はまだ序盤だった。

だが、彼らは確実に《合理統治の心臓部》へと迫っていく。


 


合理 vs 揺らぎ──

AI vs 人──


 


この先で、統治AI《ミスター》との決戦が待っていた。


 


──次回【第6章:静かなる侵入】へ続く──

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