第12話 山頂

兄 父さん、どうして宗教戦争は起こるの?

父 ( 全知全能の創造主 ) 

  それは、全体を見ず、

  互いに自分の崇拝する「神」が唯一無二と思っているからだよ。


  例えば、目の前に大きな山が有るとする。

  あらゆる方向から登山道が有り、それぞれが行列を作り登っている。

  ある人達は、ここは日当たりも良く適度に雨が降り、果実が豊富だと言う。

  別の登山口では、ここは荒涼とした砂地で、草でさえ生えていないと言う。

  また、別の登山口では、辺り一面湿地で人を襲う怪物がいると言う。

  同じ山なのに、それぞれに違った景色が見える。


  山頂に登れば全てが見えるのに、

  それぞれがまだ麓にいるため、全体が見えていないのだ。

  同じ神でも、それぞれが違って見えるのだよ。

  山頂に登り、全体を見たなら、全て同じ神だと気づけるのだがね。

弟 そんな事で争っているなんて、何か、哀れだね。

父 山が山で有るように、神は神でしかない。

  違いは無いのだよ。

兄弟 僕たちも、そう思うよ。

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