第12話 予選最終試合

【次の予選四試合目に勝利すれば、決勝トーナメント出場が決定します】


 え、次勝てば決勝トーナメント進出!?

 意外とここまで全勝してる人って少ないのかな。


 予選四試合目は中庭で行われる。

 三試合目まではあまりいなかったけど、今回は見学する人がいる。

 バトルが行われる場所は公開されてないけど、試合に負けた人が勝った人の後についてきた形で集まってきた。


 時間になり、バトルは自動的に始まった。


【バトル START!】


「頼むよ、ブルー!」


「来い、ジャイコス!」


「……ニュースになってたスライムか。油断できんな」


 相手のモンスターは、人類種の巨人。

 素早さ以外のステータスが全体的に高いから正面から殴り合うのはブルーの方が不利。

 一応、巨人は図体が大きい分、攻撃が当たりやすいという弱点があるけど、ここまで勝ち残っている相手。

 遠距離から攻撃にも何かしらの対策を用意してるだろうな。


 相手の出方も見たいし、最初は距離を取ったまま魔法で攻撃かな。


「ジャイコス、『踏み潰す』」


「ブルー、距離を取ったまま『プロミネンス』!」


「っ!スライムが魔法!?」


 ブルーが魔法を使うのは予想外だったみたいで、正面から突っ込んできたジャイコスに『プロミネンス』が直撃する。


「……ジャイコス、そのまま突っ込め」


 しかし、ブルーの攻撃を意に介さず、そのまま突っ込んでくる。


 ジャイコスは素早さのステータスが低いから動き自体は遅い。

 ただ、巨体だから歩幅が大きい。

 一瞬にして距離を詰められ、危うくブルーは踏み潰されそうになった。


「ブルー、『ファイアボール』で牽制しつつ、距離をもう一回取って!」


「させない。ジャイコス、『殴り潰す』!」


 ブルーが牽制目的で放った『ファイアボール』ごと拳でブルーを殴り潰す。


「ブルー!?」


 プル、プル


 あ、ギリギリの所で躱してる。


「ジャイコス、『地団駄』!」


 その場で足を何回も踏みつける。

 その余波で土煙がたち、視界からブルーが消える。


 オレにブルーが見えないってことは相手にも見えてない筈。

 なら、今がチャンス。


「ブルー、今のうちに距離を取って!」


「今だ!『地崩し』!」


 土煙でブルーの姿が見えないのを利用して、距離を取ろうとした所を狙われた。

 至る所で地面に亀裂が走り、割れる。


 ズドーン!!!!!


 地面が割れて思うように動けないブルー。

 ズド、ズドっと関係ないと言わんばかりにブルーとの距離を詰めるジャイコス。


 強烈な一撃がブルーを襲う。


「今だ!ジャイコス、『ヘヴィストレート』!」


 限界まで膝を折り曲げ、体勢を低くしたジャイコスが右ストレートを繰り出す。


 その巨体、突進の勢いなどが相まってジャイコスの拳がより迫力を増し、大きく見えた。


 ジャイコスの拳がブルーを捉えると、その体がグニャっと歪む。

 そのまま後方へ殴り飛ばされ、プルン、プルンと崩れた地面を弾む。


「ブルー!?」


 くっ、やられた……

 慎重になりすぎたせいで、ブルーの動きが読まれてた。

 

 ……一旦、反省は後。

 まずは立て直して追撃を凌ぐ。


「これで決める!ジャイコス、『ジャイアントスタンプ』!」


 勢いよく走り込んでから、両足で踏み込んでの大ジャンプ。

 空中で体を丸め、そのままブルー目掛けて落ちてくる。


 オレはジャイコスの攻撃を見て、回避するという選択が思い浮かばなかった。



 この攻撃、ブルーに対しては悪手だ。



 それ、ブルーみたいに小さいモンスターには当たらないでしょ?



「ブルー、任せたよ」


 この攻撃を回避するには、大きく移動するか、足の間に入り込んでタイミングよくジャンプするの二択。

 たぶん、直撃を避けても着地による衝撃波が襲ってくる。


 全てブルーに任せる。

 オレが指示するより、そっちの方が絶対にいい。


 ズドドドーン!!!!!


 ジャイコスの着地と同時に更に地面が大きくエグれ、その余波で土煙が舞う。


 きっと上手く回避してる。

 オレはブルーを信じる。


「ブルー、『プロミネンスアタック』!」


 本来、土煙が舞っている中、ブルーの姿は見えない。

 しかし、ジャイコスの足元で僅かに赤い光が見えた。


「よし!」


 ブルーが回避に成功してる。

 今の赤い光はその証拠だ。


「っ!?今のを受け切った――いや、回避したのか」


『プロミネンスアタック』はジャイコスの足に直撃したが、倒すには至らなかった。


「……まだだ。ジャイコス、『踏み潰す』!」


 ブルーが纏った炎は土煙の中でも容易に居場所が特定できた。

 敵、味方問わず。


 この時、オレの対戦相手は自分の勝利を確信した。


「……勝った」




「ブルー、『プチヒール』!」


「なっ!?スライムが回復魔法!?」


「ここで決めるよ!ブルー、『プロミネンス』『ファイアボール』『フレイムアロー』『プチサンダー』!」


 ブルーが回復魔法を使ったことに相手が驚いてる隙に勝負を決める。

 使える攻撃スキルは全て使う。

 ジャイコスの残りHP、これまでに与えたダメージからしていける!


【ジャイコス DOWN】


 ……勝った。よかった〜。

 これで決勝トーナメント出場に出場できる。



 次の瞬間、目の前にウインドウが表示された。


【鬼灯 蓮、決勝トーナメント出場進出決定】


 それからしばらくすると、決勝トーナメントに出場する16人が決定した。


 中には二階堂くん、姫島さんの名前もあった。

 それ以外にも気になる名前があった。

 水海夕さん、オリヴィア・ブラウンさん。

 一人はなんて読むのが純粋にわからなくて、もう一人は名前的に海外からの人っぽいから気になった。


 ピコン!


 なんて読むのかな?って一人で考えてたら明日から行われる決勝トーナメントのトーナメント表が送られてきた。


 二階堂くんとオリヴィアさんは反対側。

 オレと当たるとしたら決勝戦か。


 ……いやいや、その前にこっちには姫島さんがいる。

 順当に勝ち上がれば、準決勝で当たる。

 ただ、その前に2回戦で水海さん?って人と当たる。

 決勝トーナメントまで勝ち進んだ相手だし、弱いなんてことはない。

 きっと予選最終戦でバトルしたジャイコス以上に強い。


 1回戦から油断はできない。

 準決勝とか決勝とか浮ついたこと言う前にまずは1回戦を勝たないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る