第20話 最終章:ウージーサブマシンガン、そして静かなる再出発
街に平和が戻り、金賀一の探偵事務所は新たな船出を迎えていた。不正は一掃され、警察組織も浄化され、市民の信頼は回復しつつあった。しかし、金賀一の心には、まだ拭いきれない影があった。それは、師・橘慎一郎の死の真相に関わる、小さな、しかし決定的なピースだった。署長と蒲郡が逮捕され、彼らの口から橘の死に関する情報は引き出されたが、金賀一はどこか釈然としない部分が残っていたのだ。
ある雨の日、金賀一は事務所で一人、橘慎一郎の遺品を整理していた。使い古された手帳、古い写真、そして…錆びついた金属片。それは、橘の司法解剖の再鑑定時に、彼の遺体から見つかったが、警察の報告書には記載されていなかったものだった。 金賀一は、その金属片をじっと見つめた。どこかで見たような、嫌な予感がした。
その時、ハッカーが青ざめた顔で駆け込んできた。
「金賀一さん! 大変です! 蒲郡が、護送中に逃走しました!」
金賀一は、金属片を握りしめた。まさか、このタイミングで。彼の脳裏に、かつて蒲郡が黒岩と共謀し、裏社会で暗躍していた頃の凶悪な顔が蘇った。蒲郡は、橘の死に深く関わっている。そして、この金属片が、その決定的な証拠となるかもしれない。
最後の対峙、ウージーの咆哮
金賀一は、すぐに鮫島に連絡を取った。鮫島もまた、蒲郡の逃走に憤っていた。
「くそっ! やはり奴は、まだ何かを隠しているのか!」
金賀一は、あの金属片が、特定の一人称視点のアサシンが使う、特殊な弾丸の破片である可能性に気づいていた。そして、そのアサシンは、ある組織に属している。その組織は、ウージーサブマシンガンを主要な武器として使用していることで知られていた。橘の遺体から見つかった金属片は、まさにウージーから発射された弾丸の一部だったのだ。
金賀一は、蒲郡が身を隠しそうな場所を推測し、単身で乗り込むことを決意した。彼の持つ莫大な資金は、既に彼の正義を貫くための「投資」となっていた。
そして、古い廃工場。金賀一は、闇の中で蒲郡と対峙した。蒲郡は、荒い息をしながら、金賀一を睨みつけた。
「まさか、ここまで嗅ぎつけられるとはな、守銭奴探偵め…」
「あんたは、橘慎一郎の何を隠している? そして、あの時、ウージーを撃ったのは誰だ!」
金賀一の問いに、蒲郡は嘲笑した。
「ウージーだと? なんだ、まだそんなことを言っているのか。あの爺さんが、厄介なものに首を突っ込んだのが悪かったんだ」
その瞬間、闇の中から数人の影が飛び出してきた。彼らの手には、紛れもないウージーサブマシンガンが握られていた。金賀一は、一瞬にして包囲された。蒲郡は、勝利を確信したかのように高笑いした。
「金賀一、お前の正義も、ここで終わりだ。橘と同じようにな」
金賀一の選択、そして静かなる再出発
ウージーの銃口が金賀一に向けられた。しかし、金賀一は冷静だった。彼は、この状況を予測していたかのように、懐から一つのデバイスを取り出した。それは、ハッカーが開発した、簡易型のEMP(電磁パルス)発生装置だった。金賀一は、迷うことなくスイッチを押した。
瞬間、工場全体が停電し、ウージーサブマシンガンが発するはずだった銃声は、沈黙に変わった。EMPによって、電子機器は一時的に麻痺したのだ。金賀一は、この一瞬の隙を逃さなかった。彼は、闇の中で正確に蒲郡に飛びかかり、彼の首元に、師の遺体から見つかった金属片を突きつけた。
「これが、あんたが隠していた真実だ。橘先生を殺したウージーの破片だ!」
蒲郡は、金賀一の言葉に顔面蒼白になった。その時、外から警察のサイレンの音が近づいてくるのが聞こえた。鮫島たちが到着したのだ。蒲賀一は、観念したように崩れ落ちた。
全てが終わり、金賀一は再び事務所の椅子に座っていた。橘慎一郎の死の真相は明らかになった。あの金属片と、蒲郡の供述により、橘が追っていた闇の組織が、彼をウージーで消し去ろうとしたことが判明したのだ。そして、その組織の背後には、海外の巨大な犯罪組織が控えていることも明らかになった。
金賀一は、金塊を手に取った。彼の顔には、かつてのようなギラギラとした欲望だけでなく、深い安堵と、新たな使命感が宿っていた。彼は、この街の闇を完全に洗浄した。しかし、彼の戦いは、まだ終わらない。世界の闇は、広大だ。
金賀一は、新たな「金儲け」…いや、新たな「正義の行い」のために、静かに再出発を切る。彼の目には、未来への確かな光が宿っていた。
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