第23話 ふわふわさんと9月の診察。ー前編ー
今回は、9月の診察日に起きた出来事を綴っていこうと思う。
その日、目を覚ましたのは俺だった。受診も俺がする予定だったので構わない。受診は午後からだったので少し時間があった。そこで俺はさくらに交代し、中学時代の話を聞いてみる事にした。
というのも、この前日に話の流れで
そこで通院までの空き時間に彩について話を聞いてみた。彩は体の輪郭がぼやけてふわふわして見えたので、さくらが勝手にふわふわさんと呼んでいたらしい。内界で彩が現れると、さくらは眠くなり眠ってしまうらしく、接点は殆どなかったらしい。加えて内界では彩は話せなかったようだ。1時間弱、彩の事や中学時代の話を聞いていると、誰かがさくらに混ざり始めた。俺たちではなかった。
そこで、彩かと思ったさくらと母が「居るならでておいで。」と声を掛けてみた。すると少しして、内界にさくらが帰ってきた。それ以降、内界のスポット(表の見える交代に使う装置)の機能がストップしたので、俺たちは彩と母のやり取りを見る事は出来なかった。
出てきたのは彩で、やはり声が出なかったらしい。そこで人格間の連絡などに使っているホワイトボードを使って筆談で話したようだ。簡単な手話も出来たそうだ。
彼女が生まれたのは和が小6の頃。年齢は14歳。基本的には単独で表に出る事はなく、和に混ざる形で表に出ていたそうだ。高1ぐらいまでは学校の時に出ていて、出なくなってからは部屋で眠っていたらしい。ちなみに彼女の部屋は内界にあった鍵のかかった謎の部屋だった。
彼女が生まれた理由については伏せるが、年相応の女の子と言った印象でどうやら好奇心旺盛で活発な人格のようだ。ただお年頃だった事と担っている記憶の内容から、彩が表に出る間はさくらは眠ってしまうというシステムだったらしい。部屋に鍵がかかるのも、さくらとの接触を減らす為だったのではないかと言っていた。
この日は精神科への通院日だったので、1時間程して彩には中に戻ってもらったそうだ。さくらが眠ると部屋の鍵が開くそうで、さくらの昼寝の時間にでも部屋から出る事を母は提案し、次出てくるまでに名前を決めておくと約束をして別れたそうだ。(この時点では名前は決まっていなかった)
彼女はスポットを使って表に出た訳ではないのでどう交代するかも不安だったようだが、無事俺に交代が出来た。母から状況を聞き、丁度さくらが昼寝をする時間だったのでそれを見送ってから彩が出てくるのを待った。しかしさくらが寝ても彼女は出てはこなかった。30分程して、内界で鍵が開く音がした。それでも誰も出て来なかった。そこで
俺たちは状況が理解できなかったが、持っている知識をかき集め、これは統合か消滅だろうと結論付けた。統合の可能性が1番あったのは奏。ただすぐには判断できなかった。和に統合している可能性もあったからだ。そこで和に交代してみたが変化はなし。この時点では消滅の可能性が1番高い状態だった。もし彼女が役目をはたして満足できているならいいが、初めての人格との別れに皆が寂しさを抱えていた。特に実際に接してきた経験のある母は寂しかったと思う。
ここで病院に行かなくてはならない時間になった。今回は俺が行く事にしていたので、もう一度交代し病院に向かったのだった。病院へ向かう道中、俺たちはずっと彩について話していた。
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