本当の父親
明通 蛍雪
第1話
「あんたは! 俺の本当の父さんじゃないだろ!」
ミツルは今までの不満を爆発させ、目の前にいる父親に怒鳴り散らした。ミツルの父トモヤスは半年前に再婚し家族になったばかりだ。
「そんなこと言わないでくれよ。僕はお前の父親だし、本物の家族になりたいと思ってる」
「父親面すんな! 俺は認めないからな!」
母はパートに出ていて家には二人きり。学校帰りのミツルを呼び止め家族としての会話をしたがったトモヤスに嫌気がさしていたミツルは、母がいないのを良い機会だと反抗した。
「俺は父親になってくれなんて頼んでない! あんたが勝手に再婚してこの家に転がり込んできたんだろ!」
「ミツル。そんな寂しいことを言うな。父さんはお前の事が知りたいだけなんだ」
「うるさい! 俺の父さんは、俺の本当の父さんは……」
高校になるまでの間この家でミツルを育ててきた親は、母親に愛想を尽かしこの家を出ていった。その離婚の直後に新しい父親だと言われてもミツルは納得できなかった。
「お前に認められるように頑張る。だから、ミツル、お前も俺を見ていてくれ」
「黙れ! 血の繋がっていない他人が僕に指図するな!」
「なんだと!? 父親に向かってなんだその口の聞き方は! ちょっとここに座りなさい!」
ミツルの最後の一言に、今まで堪えていたトモヤスも堪忍袋の尾が切れたようで怒鳴った。今までミツルに気を遣って怒ったことがなかったトモヤスの怒鳴り声に驚き、ミツルはたじろぐ。
「お前は一つ勘違いをしているぞミツル。座りなさい」
トモヤスはダイニングテーブルを挟んで向かい側に座るよう指示してくる。いつも以上に真剣な様子にミツルは渋々従って座った。
「俺は本当の父親だ。これを見なさい」
トモヤスはそう言うと、一つの封筒をテーブルに置いた。
「これは?」
「DNA鑑定だ。俺とお前の」
「なんでこんなもの……」
「お前は言ったな。血の繋がっていない他人だと。それがお前の勘違いだ」
「っ!?」
トモヤスの発言に驚愕したミツルは慌てて封筒の中身を取り出した。そこには、トモヤスとミツルの親子関係を証明する書類が入っていた。
「これは、どういう……」
「つまり、今まで育ててきた男こそが他人で、俺こそが血の繋がった本当の父親ってことだ」
「……うん? ってことは俺の母親が二股して、あんたは托卵したってこと?」
「そう言うことだ。母さんから聞いていないのか? 離婚の原因もそれだ」
「はぁ!?」
衝撃の連続にミツルは開いた口が塞がらない。
「俺との関係がずっと続いていて、それがバレた上に、お前との血の繋がりもないことが分かって、あの男は出ていったんだ」
「マジかよ。父さん可哀想すぎるだろ。そりゃ出ていくわ」
「と言うわけだから、今日から俺のことは父さんと呼べよ」
「いや呼ばねえよ!? なんでいけると思ったよんだよ! より最低だよ!」
怒るミツルは喉が枯れるほどに声を張り上げた。
「ちなみに、お兄ちゃんになるんだ。良かったな!」
「いや、何にもよくねえよ! キャパオーバーだよ!」
ミツルは次々と明かされる衝撃の事実に頭を抱え、理解することを諦めて逃げ出した。当然グレた。
本当の父親 明通 蛍雪 @azukimochi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます