第3話
まずは歩道に出よう。
そう思ったのは2人の近所(誰だか知らない人)に見られたからだ。
乗りこなせる<恥じらいになってしまったのだ。
サッと2人から目を逸らす。
「今時キックボード?」みたいな顔をしていたと思う。
半ばヤケクソで、「いや、これが私のスタイルだし?」みたいな毎日乗ってます感を出した。
あくまでもたった今、初乗りだと言うのに。
よくあるチェーン店で、同じ系列の店だからと、知ったかぶって物を見定めたり、食べたりする、あんな気持ちだ。知ったかぶった挙句、同じようで違う……商品コーナーの位置も違うのに、なにを偉そうに知ってる感出してるんだ。恥ずかしい上に縮こまるのも、時間の問題だ。まぁ、もちろんこれは後で伏線回収される羽目になるのだが。
彼とのランデブーは照り照りした太陽の真下から始まった。乗り心地は悪くない。幼い頃を思い出す。ああ、私だけキックボードで、友達みんな自転車だったな……。
たくさん走ったな……。あの時はどこへでも行けたな。30分かけても、1時間近く走っても疲れはしなかったよ。だがどうだい?現在は。
三十路な私は太ったことを忘れていた。重さはタイヤのローラーに感じ、転がれば転がるほど、体重が身に染みて分かる。
……ああ、今になってはお金も時間も戻らないだろうしな。
後にも前にも戻れないことを悟り、そして急な現実を目にした私はトホホ、と嘆くしか無く、幼い記憶とはだいぶかけ離れたショックを感じたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます