【1000PV感謝!!】最強少女の魔法奇譚
浪崎ユウ
プロローグ
落ちてきた少女
黒い霧の漂う巨大な城。
幾度もの戦いを想起させる、荒れ果てた大地。
その前で、異形の生物達が彼女の通る道を開く。
創り出したのは、高さ何十メートルもある扉だった。
力を込めて片手を触れると、世界そのものが破壊されるような衝撃音と共に重厚な扉は開け放たれる。
溢れんばかりの突風と、濃密な匂い。
その小さな体が吹き飛ばされそうなほどの風を、ものともせずに、扉の向こうへと踏み出した。同時に大量の白い羽が宙を激しく踊る。
奈落から染み出したような黒縄色の禍々しい扉。
瞬間────、世界から完全に消滅した。
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2250年11月22日、東京。
空から、何かが落下してきた。
そう断言できるのは、一瞬で地面が割れ、クレーターが出現した瞬間を目撃したからだ。
夜の静寂が引き裂かれた轟音。
巻き起こった土煙が次第に晴れていく。
黒いスーツに、深い緑色の隊服を上から纏った“国防軍“の部隊が瞬時に駆けつける。
中心に“ソレ“は横たわっていた。
白い肌。ところどころ破れた見慣れない服。
血の代わりに、淡く暗い光の粒子が舞っていた。
ソレは、少女だった。
「子供、か…?」
部下のひとりが、あり得ないものを見るように呟く。 異常な光景に呆然としていた男──部隊を率いる隊長は、その声に現実へと引き戻された。
「子供が落ちてきた!! 早く保護しろ!!」
男は、喉が裂けんばかりに怒鳴った。響いた声も闇へと溶け消えていく。
「しかし、隊長。もう死んでいるのでは──」
部下がそう言いかけた、その瞬間だった。
空間が軋む。
突如、膨大な魔力が放たれた。
その場にいた全員が身を強張らせるほどの圧倒的な“力“。それも意識を失っているはずの彼女の指先が、僅かに揺れただけ。
空気が震え、兵士たちは本能的に硬直した。
恐怖。声を出そうとしても空に散る。
誰一人、動けなかった。
しかし唯一、部隊の隊長は呼吸を再開した。彼の部下に強く鋭い目を向け、叫ぶ。
「……生きてる……あの子はまだ生きている!!! 隊長命令だ、救護班を呼べ!!」
そして、後に誰もが知ることになる。
あの日、空から現れた“彼女”が、この世界のすべてを変える存在であったことを。
全ては────、 この日から始まった。
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