遠いオルゴール

Rie

― 錆びた鍵で、また回して ―


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 ほこりの香りに まじる香水

 あなたの面影が まだ棲んでおります

 きつく閉ざされた あの引き出しを

 そっと撫でれば 軋んで音がするのです


 


 くるり ことん

 触れたオルゴールの蓋

 鳴らせば 音色より先に

 胸の奥が 鳴ってしまいました


 


 飾られたまま 時を止めた指輪

 すべてが 記憶の中だけで

 まだ 綺麗に並んでおりますのに


 


 ……どうしてでしょう

 回してはいけないものほど

 指が 迷いもせず

 鍵に合ってしまうのです


 


 くるり ことん

 もう一度だけで構いません

 この箱の中に わたくしの想い

 もう一度だけ 鳴らせてくださいませ


 

 くるり ことん

 もう一度、

 あなたに届きますように



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遠いオルゴール Rie @riyeandtea

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