第3話 朝花との帰り道
車が行き交いする交差点。
朝花とはるかは歩いていた。
蝉の声がうるさくて、立ち並んだビルを横目に大通りを進んでいく。
額に手をかざしながら朝花は。
「はるかはさ、将来の夢って、ある?」
はるかは首をひねり、言われてみれば、と考えた。
「将来……。そういえば特にないかも……。朝花は?」
「ボクは画家になりたい。色んな人にもっとボクの絵を知ってもらって、もっと見てもらいたい。だから、そのために今頑張ってるんだ」
そう言う彼女の瞳は輝いている。
目指すべき場所を真っ直ぐと見るような、ただ純粋な、絵に対してのひたすらの思いが伺えた。
「いいじゃん、頑張って」
はるかが笑顔で答えると、朝花はふっと微笑んで、はるかの手の甲に軽くキスをした。
「ボクにはもう一つの夢があるんだ。それは君と二人っきりで幸せに暮らすことだよ」
朝花の立ち姿はスラリと凛々しく、同時に爽やかで。
おとぎ話に出てくる王子様のように、美しいという印象を与えるビジュアルだった。
ただ、格好いい。
はるかは驚き、心臓が止まるかと思うほどに緊張し。
顔を真っ赤に染めた。
「朝花……それは、ずるいよ…………」
「ふふっ、可愛い」
「もう、人が歩く道なんだからやめてよね!」
「あぁ、分かったよ」
やりとりをしながら、はるかは自分の住むマンションの入口前に着く。
朝花は腕時計を見ながら、はるかに約束した。
「じゃあ、また放課後ね。今から一時間後にここに来るよ」
「了解! ありがとう。それじゃ」
「うん、また」
手を振り、マンションに入る。
はるかは部屋の鍵を開け、自分の家に帰って行った。
しんと静まった家に人の気配はない。
母は今日も夜遅くまで仕事に出かけてる。
しばらく家で一人で過ごすしかない。
自分の部屋のベッドで寝転がり。
ぼーっとスマホをいじる。
チクタクチクタク。
時計の針が小さく動く音。
静かな場所に、少しうつらうつら眠くなってしまう。
ストン、と。
スマホごと頭に落としたまま、はるかは眠ってしまった。
次に起きたのは、朝花が来たときだった。
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