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車のエンブレムを見るとこの街の支配企業、しかもかなり階層が上のものだとわかりました。
車を降りてきた人物は蟹蟹のメンバーと一緒にやってきたことを考えると、先日の件で事実確認に訪れたようでした。
「ここが、その生鮮肉を出したところかね。とてもそうとは思えないのだが。」
「いやいや、ラプーさん。この店に来ていた客が持ってきたんだよ。あれはあんたも驚くぜ、絶対に。」
「それでは当人が来るまで待つしかないではないか。私はそれなりに忙しいんだがね?」
入口で言い合いになっていると他のお客様に迷惑が掛かるため、店で一番マシな個室へと案内……いえ、押し込めました。
「それで、当店に何のご用でしょう……。」
「入口で話しているのは聞こえていただろう?蟹蟹の言う客を紹介してもらいたい。」
この街に店を構える以上、拒否権のない命令です。
「あのお客様は2,3日毎にご来店いただいておりまして、前回は昨日夕方ごろお見えになりました。」
「呼び出すことは可能か?」
「いえ、連絡先はわかりません。」
「……ふむ。では来たらすぐ蟹蟹のメンバーに連絡を取ってくれ。迎えを寄越す。」
「承知いたしましたが……お客様のご意志となりますので、そこはご了承いただきますようお願いいたします。」
「わかっている。来たがらないときはその肉を店に置いておいてくれ。冷蔵庫ぐらいはあるだろう?」
「はい。承知いたしました。」
そして2日後、
企業の方には私が連絡するまでもなく、張っていた蟹蟹のメンバーが連絡をしてくれていました。
「……つまり我々と取引する気はないと?」
「うん。ここに住めーとか、外出るなーとか。制約多すぎてこっちにメリットないじゃん。」
「飲まなければ君の安全は保証できないぞ?」
「そうだね。でもここの住人になるつもりはないから。」
「そうか。それは残念だッ!」
言うやいなや天井、床下、壁とありとあらゆるところから遠隔式の銃が出て、銃口をボイドさんに向けました。
そして出入り口から突撃してきたフルボーグがボイドさんを囲みました。
銃口を向けられている状況にも関わらず余裕の表情で「ひとつ覚えだなぁ」と言って、閃光弾をバラ撒いて目をくらまし、そのまま姿を消したのです。
そして翌日、何事もなかったかのように来店して
私ですか?尋問は受けましたが正直に話したら解放されましたよ。
さて、始めて来たはずの場所を、しかも一箇所しかない出入り口を封鎖していたにもかかわらず、まんまと逃げおおせる手段。
セキュリティチェックに引っかからないように武装を持ち込む隠蔽力。
企業は自分たちの手に負えない人物として諦めました。
されど高級食材は欲しいのか、来店されるたびについでの購入を依頼されました。
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