やまとなでしこ
Rie
― 冷たい裾 ―
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お淑やかだと
誰もがそう仰るのです
下を向いて 笑えば
それだけで 良妻の仮面が張りつく
ですが今夜も
わたくしの裾は 他所の名を吸い
袖は 他人の香で濡れております
口には出しませんが
声を出せば 彼は泣きそうになるので
しずかに 喉を鳴らすだけ
わたくしの仕草に みなさん
簡単に 惑うのです
可愛げを 一匙
無垢げを 一滴
それを混ぜれば たやすく溶ける男心
……こんなもの、遊戯でしかありませんのに
やまとなでしこ
それは ただの衣
誰よりも 貪(むさぼ)り
誰よりも 冷たい指を 持つくせに
なのに彼は
「君は やっぱり特別だ」などと
耳元で 溺れた声を出すのです
――かわいそうに
ねえ、そんな目で見ないで
わたくし、
なにか 悪いことでもしましたか?
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やまとなでしこ Rie @riyeandtea
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