バックプリントのアンチ

 バックプリントのアンチ、やらせてもらってます。


 大学生の頃から自分で服を選び始めた。子供の頃は母親のウィンドウショッピングに付き合って「何が楽しいんだ……」と思っていたけど、いざ自分がやるとめちゃくちゃ楽しい。カードゲームにはそこまで詳しくないけど、自分が今持ってるアイテムとのシナジーを考えてデッキを組む感じに近いと思っている。

 服を買う場所もユニクロからセレクトショップに変わり、またユニクロに戻ったりする。一時期は全身WEGO怪人だったし、今は「印」というセレクトショップがかなりお気に入りだ。


 この身体だと服も脱ぎ着しやすいものが楽で,特にパンツ(下着ではなくズボンの方)は結構制限がある。硬めのジーンズでさえ若干敬遠するので、レザーとか履いたらどうなってしまうんだ……?

 その分トップスとかアウターは結構遊びがちで、最近は柄シャツとか独特なデザインのTシャツに憧れがある。この前一目惚れしたのは「パープル地にネオン発光する力士と花魁が散りばめられたシャツ」だ。ネオサイタマすぎる。

 こういうのを選ぶと家族に呆れられるので泣く泣く買わなかったが、めちゃくちゃ良くないですか!?


 1ヶ月前に、人生で初めてアメ村に行った。大阪の若者向けファッションの中心地で、一帯にセレクトショップや古着屋、ライブハウスがある。R-指定が中学時代に全身プリントのターミネーターパーカーを買わされた場所だ。

 外に飾ってあるTシャツが可愛くて入った店は、物理的障壁である狭い通路と精神的障壁である元気そうな店員さんがいた。全身から充実している若者のオーラを感じながら、壁に掛けられている服を眺める。

 YOIDOREという名古屋のブランドらしい。ネオンデザインで「酒愛好家」と書かれた白Tだ。かなり好きなセンスかもしれない。


「これ、お兄さん似合うと思いますよ! 芸能人だと○○が着てて、大阪だとウチしか取り扱ってなくて……」


 セールストークが上手い。一目惚れしたし、買おうかな…….。そう思って値札を確認すると、6000円だった。普段買ってるTシャツの倍の値段だ。いや、でも……惚れたし。これくらいの散財は許される! 買う!

 店員さんに在庫を出してもらってる間、ふとTシャツの首元に目が留まった。デカい模様と壁に掛けられていることで気づかなかったが、明らかに違和感がある。


 前面だと思っていた柄は、めちゃくちゃバックプリントだった。


 最近のオシャレTシャツはバックプリントが多く、背中を見せるタイプがかなり主流だ。確かに街を歩く人は正面より後ろから見ることが多いし、そこで目を惹くのは理に適っている。

 ただ、僕って車椅子なんすよ。背もたれが邪魔して全然バックプリント見えないんすよ……。


 結局、僕はバックプリントに屈した。友達に会った時はなるべくこのTシャツをイジってほしいので、若干背中を丸めて柄が見えるような状態で話すようにしている。その時の自分、shiftキー押した時のスティーブだな……。

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