歴史シリーズ2 世良修蔵を斬った男
飛鳥竜二
第1話 世良修蔵
空想時代小説
時は幕末、というか新政府が樹立された慶応4年(1868年)4月。新政府の参謀である世良修蔵は仙台にきていた。仙台藩らは会津藩の降伏を新政府軍が受け入れるように交渉にはいった。
ところが、新政府軍はかたくなに会津藩を討伐するという。そこで新政府軍側に奥羽の各藩も参加せよと言ったのである。それでも、奥羽各藩は会津の恭順を受け入れるように訴える。そこで、世良修蔵は奥羽の諸藩の前で次のように言ったのである。
「ここにおられる奥羽の諸藩の方々は、少しは道理がわかるゆえ、使者としてこられたと思うが、とてもとても見下げはてたるものである。このような使者では、主人である方々も大した者ではなかろう。所詮、奥羽には目鼻のきく者はおらぬのだな」
と奥羽諸藩を侮辱したのである。
この話を聞いた仙台藩士は怒り心頭だった。中には、「すぐに世良修蔵を斬るべし」という者も現れた。だが、藩士がその話を聞いた時には世良修蔵は仙台を離れていた。
左馬之介は藩校養賢堂で、その話を聞いた。18才の若武者である。実家は北の地である岩出山にある。政宗が移封された時に、わずかな領地を得て土着した下級武士の子孫である。
祖父が商才にたけ、名産の栗を使った団子を発案し、それが鳴子の湯にくる湯治客に好評だった。そこで、近在の商家から礼金が毎年のようにはいり、下級武士としては豊かな生活をするようになっていたのである。左馬之介は二男だったので、部屋住みかどこかへ養子に行く気楽な身分である。今は藩校の講武館で師範代の一人をつとめている。剣術の腕は師範にも劣らぬ腕前である。
中級武士の姉歯武之進が左馬之介に話しかける。
「わしは世良を追う。お主はどうする?」
「もちろん、拙者もお供します。ですが、藩の許しは得ているのですか? 下手をすると脱藩ということになるのでは?」
「うむ、そのことだが瀬上殿がご家老に願いをだしている。だが、許しがなくても世良を許すわけにはいかぬ。脱藩覚悟じゃ」
「分かり申した。拙者は二男坊ゆえ気楽な身分。武之進さまに従いまする」
「うむ、腕のたつお主がおれば頼もしい。よろしく頼むぞ」
ということで、夜半に養賢堂を旅立つことになった。
そこに瀬上主膳もやってくる。
「皆の者、ご家老の許しがでたぞ。交渉の場で得た屈辱はなみのものではなかったということだ」
と、そこに集まった10人ほどが一斉に雄たけびをあげた。めざすのは南である。新政府軍は白河攻めの準備をしているという。そこまでいけば世良修蔵は必ずいると思われたからである。
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