第9話 理髪

第1章:理髪の準備と日常の始まり


十月に入り、秋の深まりと共に、朝晩は肌寒さを感じるようになった。高校三年生となった和音と桜花は、大学受験に向けて、いよいよ本格的なラストスパートをかけようとしていた。勉強漬けの日々の中、彼らにとってささやかな息抜きであり、同時に互いの絆を確かめ合う大切な時間があった。それは、週末の午後に行われる、互いの髪の毛をカットし合う「理髪」の儀式だった。


その日も、休日の午後。二人はアパートの洗面所に、理髪セットを用意した。バリカン、ハサミ、コーム、そして床に髪が落ちないように敷くケープ。使い込まれた道具たちは、彼らの長年の共同作業を物語っていた。窓から差し込む秋の柔らかな光が、洗面台の鏡に反射して、部屋を明るく照らしている。

「ねえ、和音。今日はどのくらい切る?私、そろそろ前髪が邪魔になってきたの。」

桜花が、鏡に映る自分の前髪を指で持ち上げながら尋ねた。彼女の瞳は、和音に身支度をしてもらうことへの期待に満ちている。

「そうだな。まずは、いつも通り、揃えるくらいにするか?」

和音は、桜花の髪にそっと触れた。彼の指が、彼女のサラサラとした髪の間を滑る。慣れ親しんだ髪の手触り、そしてかすかに香るシャンプーの匂いが、和音の心を落ち着かせた。それは、彼らにとって、ごく当たり前の日常の始まりだった。しかし、その日常の中に、彼らだけの特別な親密さが深く根付いていることを、二人は知っていた。


第2章:桜花の髪刈り:幼い日の回想


桜花は、洗面台の椅子に座り、和音に背中を向けた。和音は、ハサミを手に、桜花の後ろ髪をカットし始める。チャキン、チャキン、とハサミの乾いた音が、静かな洗面所に響く。切られた髪が、白いケープの上にパラパラと落ちていく。その音を聞きながら、和音は幼い頃の記憶を辿っていた。


あれは小学校低学年の頃、まだ桜花が和音の髪を刈ったばかりの頃のことだ。あの時、桜花は初めて持つバリカンに目を輝かせ、和音の頭を何の躊躇もなく虎刈りにした。その時の屈辱感は、今でも鮮明に覚えている。母に五分刈りに刈り直された時の、頭皮に感じる冷たさ。友人たちからからかわれた時の、幼いながらの羞恥心。しかし、同時に思い出すのは、桜花の無邪気な好奇心と、和音を「弄ぶ」ことに純粋な喜びを感じていた、幼い彼女の表情だ。和音は、その時の桜花の楽しそうな笑顔を思い出し、小さく苦笑した。


桜花もまた、和音の指が自分の髪を梳く感触に身を委ねながら、幼い日のことを思い出していた。

「和音が私の髪を整えていると、なんだか、あの頃を思い出すね。」

桜花が、そう呟いた。

「どの頃のことだよ。」

和音は、彼女の言葉に、わずかに笑みを浮かべた。

「和音の髪を初めて切った時よ。あの時は、本当に楽しかったな。」

桜花の声には、無邪気な喜びが込められていた。和音の髪を「弄ぶ」ことに満足し、彼を「自分のもの」として扱えた幼い独占欲。そして、和音の不満に対する、幼いながらの独占欲を再確認する。彼女にとって、和音の髪を切ることは、幼いながらの彼女なりの愛情表現だったのだ。和音は、彼女のそんな姿に呆れながらも、結局は彼女を許してしまう自分の甘さを自覚していた。十月の柔らかな光が、洗面所の鏡に映る二人の姿を、優しく照らしていた。


第3章:和音の髪刈り:いたずらと責任の始まり


桜花の後ろ髪を整え終えると、和音はハサミを置き、今度は自分の髪を桜花に任せる番だ。和音は洗面台の椅子に座り直し、桜花にバリカンを手渡した。ブィーン、という低いモーター音が洗面所に響く。桜花は、楽しそうにバリカンのスイッチを入れた。

和音は、桜花の指が頭に触れる感触から、彼女の愛情と、彼を「弄ぶ」という支配欲を感じた。彼の頭皮を滑るバリカンの振動が、全身に微かな震えをもたらす。和音は、彼女のそんな支配を受け入れながらも、深い愛着を感じていた。


彼の脳裏には、小学校低学年の頃の、桜花に対するいたずらが鮮明に蘇っていた。それは、居眠りした桜花の髪を、女性誌の記事を参考に三つ編みにし、可愛らしいお団子ヘアにした夜のことだ。あの時、和音は、彼女の無防備なうなじにドキドキし、彼女の全てを支配しているかのような、密かな興奮を感じた。そして、翌朝、和音の母に髪型を褒められ、「責任取ってね」と桜花に言われたのがきっかけで、毎朝の髪結いが彼の習慣となったのだ。それは、単なる習慣ではなく、彼の桜花への「責任」の始まりでもあった。


桜花もまた、和音の髪を刈りながら、あの夜のことを思い出していた。

「和音、あの時、私の髪で遊んでいたでしょう? でも、あの髪型、お母さんにも褒められたし、和音に責任を取らせることができたから、許してあげるわ。」

桜花の声には、和音に髪を弄ばれたことへの戸惑いと、それが和音の愛情表現であることへの理解、そして、彼に「責任」を取らせることに成功した喜びが混じり合っていた。彼女にとって、和音の髪を刈ることは、彼を「弄ぶ」楽しみの始まりであり、彼が「自分のもの」であるという確信を深める行為だった。十月の柔らかな陽光が、洗面所の鏡に映る二人の姿を、温かく照らしていた。


第4章:中学の校則と髪型への反発


桜花が和音の髪を刈り終えると、二人は中学時代を振り返った。髪の長さを整える中で、ふと話題になったのは、中学の校則による髪型規定の厳しさだった。二人の表情には、当時の不満がよみがえる。


和音は、中学入学前の春休みに、桜花と二人で生徒手帳を読み込んだ時のことを思い出した。あの時、桜花の顔は、見る見るうちに不満で歪んでいった。染髪・パーマ禁止、長さは首筋・襟元が見える程度、耳出し、前髪は眉毛にかからない長さ。細かく規定された校則は、桜花にとって、自由への束縛そのものだった。彼女は「強制されて束縛されているようで生理的に嫌だ」と反発し、テーブルに伏せてうじうじと拗ねた。和音は、そんな桜花を「無駄にエネルギー使っても楽しくないでよ」と諭したが、彼女の髪への執着が、彼女の個性と自己認識に深く関わっていることを理解していた。


「あの頃は本当に嫌だったな。まさか、あんなに髪型に厳しいなんて。」

桜花が、腕を組みながら呟いた。彼女の柔らかな指先が、短く整えられた和音の髪に触れる。

「仕方ないだろ。校則は絶対なんだから。」

和音は、ため息交じりに言った。彼は、桜花の髪へのこだわりと、校則への不満を深く理解していた。彼女の個性への深い愛着が、和音の心に温かい波紋を広げる。彼は、桜花の髪が、単なる身だしなみではなく、彼女の自己表現の一部であることを知っていた。十月の柔らかな光が、洗面所の窓から差し込み、二人の顔を静かに照らしていた。


第5章:断髪の記憶と絆の強化


和音は、桜花の髪型への不満を聞きながら、ふと中学入学前の春休みに、桜花の髪を自分の手で短く切った時のことを思い出した。あの時、桜花がうじうじしているのを見かねた和音は、彼女が後頭部から三つ編みにして垂らしていた髪を、優しく撫でた。彼女の髪は、いつも彼の指に吸い付くようにしなやかだった。撫でられるに任している桜花の隙を狙って、和音は、三つ編みにしていた部分を根元からバッサリとハサミで切ってやったのだ。チャキン、とハサミの乾いた音が部屋に響き渡り、パサリ、と音を立てて、切られた髪がテーブルの上に落ちた。桜花の長く美しい髪の一部が、あっけなく切り離された瞬間、部屋の空気が、わずかに重くなったように感じられた。


「ほら、かわいい。」

和音はそう言って、桜花の頭を軽く撫でた。桜花は、一瞬何が起きたのか理解できないといった表情で、切られた髪と和音を交互に見た。そして、その琥珀色の瞳に、驚きと、そしてかすかな悲しみが浮かんだ。

「酷い。感傷に浸らしてくれたっていいじゃないか。」

桜花は、そう言って和音を睨んだ。その声には、大切なものを失ったような、かすかな嘆きが込められていた。和音は、彼女の気持ちを痛いほど理解できた。長年大切に伸ばしてきた髪を、自分の手で切られたのだ。しかし、これも彼女のためだ。

「何度見たって校則は変わらないよ。桜花が素敵な女の子なのは俺が知っている。髪形が多少変わったところで魅力は変わらない。そもそもオシャレして誰に認めて欲しいっていうのさ。桜花の自己満足かい?」

和音の言葉は、桜花の本質を突いていた。その言葉に、桜花の体がピクリと反応した。彼女は、和音の視線から逃れるように、わずかに顔を伏せる。

「自己満足で何が悪い。それが自由ってものでしょう。」

桜花はそう反論したが、その声には、確信が揺らいでいるような響きがあった。彼女は、自分の本心を和音に見透かされたことを、わずかに恥じているようだった。

「でもさ、自分の髪形の優先順位ってどのくらいなの?無駄にエネルギー使っても楽しくないでよ。」

和音の言葉に、桜花は沈黙した。彼に言われるまでもなく、彼女自身も、この髪型問題にエネルギーを使いすぎていると感じていたのだろう。和音は、彼女の肩にそっと手を置いた。その手から伝わる温もりが、桜花の心にじんわりと染み渡る。この幼い頃の強引な行動が、結果的に二人の絆を深めたことを、和音は今、改めて実感していた。


第6章:新たな髪型の確立と和音の丸刈り


桜花は、しばらく黙り込んだ後、ゆっくりと顔を上げた。その瞳には、葛藤と、そして和音への信頼が混じり合っている。彼女の唇が、かすかに震えている。

「……ちゃんと座り直すから、責任を取って、最後まで仕上げまでやってくれるのでしょうね?」

彼女の声には、諦めと、そして和音への甘えが込められていた。和音は、彼女が自分にすべてを委ねることを選んだのだと理解した。

「それと電動バリカンを持ってきなさい。あなたの髪も刈ってあげるから。」

桜花は、そう言って、ニマッと笑った。彼女の目には、いたずらっぽい輝きが宿っていた。和音は、内心でため息をついた。これで、自分の丸刈りも確定した。しかし、彼女の機嫌が直ったことに安堵し、理髪セットの道具を用意するために立ち上がった。彼の心には、彼女を笑顔にできるなら、という思いが勝っていた。


あらためて理髪セットの道具を用意してから、和音は桜花の後ろ髪を整え始めた。短くなった髪を丁寧に梳き、襟足を刈り上げる。彼女の首筋に触れる指先から、肌の温もりが伝わる。その感触は、和音にとって心地よいものだった。桜花は、鏡で確認した自分の新しい髪型に、満足げに頷いた。

「合格点ね。」

和音は、彼女の辛口な評価に苦笑したが、その言葉には、確かに満足が込められているのを感じた。彼女の満足そうな表情に、和音は満たされた気持ちになった。十月の柔らかな光が、鏡の中の二人の姿を明るく照らしていた。


立場を変えて、今度は桜花が和音の髪を切る番だ。和音は座卓の前に座り、桜花にバリカンを渡した。ブィーン、というモーター音が部屋に響く。桜花は、切り落とされた自分の三つ編みの髪を手に取り、小さくため息をついた後、仕返しとばかりに、和音の髪を五分刈りにした。彼の頭に触れる彼女の指先は、容赦なく、しかしどこか楽しげだった。バリカンの振動が、和音の頭皮に直接伝わる。

「和音で遊ぶ方が、やっぱりいいや。」

桜花は、やり切ったという顔で五分刈りにした和音の頭を撫でてきた。彼の頭に触れる彼女の掌から、熱が伝わってくる。強引なことをしたという自覚はあるが、彼女の機嫌を直してくれたことに、和音は安堵した。十月の柔らかな光が、刈られたばかりの和音の頭を照らしていた。


この時切った二人の髪を、桜花は大切に持ち帰った。和音に隠れて何かを作っているようだったので気になってはいたが、五月になって、二つの可愛らしい人形が、ケースに入れられて和音の家の居間に飾られていた。人形は、中学の制服を着ていて、男女一組だ。

桜花は、出来栄えを自慢していた。

「いい出来でしょう。私とあなたの中学入学記念の人形なの。髪は本物使っているからね。」

和音は、その後も追加された人形の裏書きを見るたびに、思わず目を擦った。そこには、『和音と桜花の中学入学記念。和音が桜花を不幸にしたら呪う。和音が桜花を幸せにしてくれますように。』なんて書かれていた。見なかったことにしたいと思う和音の隣で、桜花は満面の笑みを浮かべている。彼女の強い独占欲と、彼への深く屈折した愛情が、形となってそこに存在していた。それは、彼女の和音への絶対的な支配欲の表れでもあった。


第7章:校則への反発と体毛のケアへの発展


中学で和音が生徒会長、桜花が副会長をしていた時のことだ。十月の爽やかな風が、開け放たれた生徒会室の窓から吹き込み、資料の山をわずかに揺らしていた。校則の髪型規定が厳しすぎると、一年生の女子の一部が反発し、話題になっていた。生徒会にも、その不満の声がいくつか寄せられていた。

「桜花、髪型の校則が理不尽だって騒いでいるのがいるって聞いたけれど、何か聞いている。」

生徒会室で資料を整理しながら、和音が尋ねた。彼の声には、僅かな疲労が滲んでいる。

「人権の侵害だって騒いでいるのが数人いるだけだよ。SNSなんかで外部を巻き込んでいるから、大事になっているだけ。」

桜花は、呆れたように肩をすくめた。彼女の口元には、冷徹な現実主義者のような笑みが浮かんでいる。

「騒いだところで、そう簡単に校則なんて変えられないのにね。」

和音は、現実的な視点でそう呟いた。学校の規則というものは、一度決まると簡単には揺るがないものだ。

「読者モデルをしているからとか言っていたけれど、特例を適用するには家計を支えるレベルの所得を稼いでいることが条件だから、市外に引っ越すか私立に転校した方が早いよ。ウィッグを使えという話もあるしね。」

桜花は冷静に分析した。彼女の言葉は、冷たく聞こえるかもしれないが、それが最も現実的な解決策であることを和音は知っていた。

「基本的には、市の教育委員会によるモデル校則をそのまま使っているだけだから、市内の公立中学はほぼ同じ校則だからな。」

和音は、校則の背景にある、より大きな枠組みについて説明した。

「ポニーテールやお下げ髪などの長髪の禁止事項って、ローカルの実施細目だけれどね。」

桜花は、生徒手帳の小さな文字を指でなぞった。

「昭和の暗黒時代に、伸ばしている髪を切ってしまったりする校内暴力やいじめがあったとか、教師の指示に従わずに髪をいじり続けた生徒がいたとかが、いくつかの理由があって決まったことみたいだけれど、変更するために火中の栗を拾う様な先生なんていないでしょう。」

和音は、校則の裏にある背景を説明した。それは、過去の教訓から生まれた、ある種の防衛策だった。

「気にするのは、議案として挙がってきてからでもいいか。」

桜花はそう言って、和音の髪にそっと触れた。彼女の指先が、和音の耳元を優しくくすぐる。

「和音が私に髪を伸ばして欲しいなら、髪を伸ばすのは高校になってからのお楽しみ。」

彼女の瞳には、いたずらっぽい輝きが宿っている。その言葉には、未来への期待と、和音への甘えが込められていた。

「それで俺にメンテナンスをさせるのかい? 当然でしょう?」

和音は苦笑しながら、桜花の言葉を受け入れた。彼にとって、彼女の髪のケアは、もはや義務ではなく、愛情表現の一部となっていたのだ。


中学の間は、校則の関係もあって、桜花はショートボブ、和音は丸刈りにしていたが、定期的にお互いにカットをしあっていた。互いの体に触れること、そして相手をケアする行為は、彼らにとって、絆を深める大切な時間だった。ハサミが髪を切る音、バリカンの振動、そして互いの肌の感触。それは、言葉以上に多くのことを伝える時間だった。高校になってからは、部活の関係もあってそれほど長くはできないとはいえ髪を伸ばすようになる。和音は、再び桜花の長い髪を編み込み、束ねるようになった。彼の指が彼女の髪を梳き、ピンで留めるたびに、彼女の柔らかな体温と、かすかな息遣いが伝わってくる。いつの間にやら、頭髪のみならず、ムダ毛とか、腋毛などの陰部の毛の処理まで和音にやらされるようになっていた。


桜花曰く、「髪とか毛の処理をしている時って、喧嘩していても一時的に休戦できるし、自分のことだけを見ていてくれるのがいい。」とのことだ。彼女の言葉は、この究極的にプライベートな行為が、和音への彼女の深い信頼と、彼に全ての自分を委ねる安心感の表れであることを示していた。和音の指先が、桜花の柔らかな肌に触れ、彼女の体毛を丁寧に処理するたびに、彼らの間に、言葉では言い表せないほど深い絆が形成されていくのを感じた。それは、単なる身体的な行為ではなく、互いの存在を深く受け入れ、慈しみ合う、究極の愛情表現だった。和音は、桜花の無防備な姿に触れるたびに、彼女の全てを自分が守りたいという思いが強まった。十月の陽光が、彼らの間にある親密な空気を、温かく照らしていた。


第8章:理髪の終わりと未来への確信


全ての理髪が終わる。和音は桜花の髪を優しく撫で、その仕上がりを確認した。指先が、彼女の髪の毛に触れる。サラサラとした感触は、いつものことながら心地よいものだった。桜花は和音の隣に寄り添い、互いの体を抱き寄せる。二人の体はぴったりと密着し、互いの体温が伝わってくる。


十月の夜空を見上げると、満月が煌々と輝き、星が瞬いていた。静かな部屋の中で、二人は将来の夢について語り合う。教師としてのキャリア、子育て資金を貯めること、そして20代で子供を二人もうけるという具体的なライフプランを再確認する。

「ねえ、和音。これからも、ずっと、ずっと、一緒にいようね。」

桜花が、和音の腕の中で呟いた。その声は、眠たげで、しかし揺るぎない決意に満ちていた。

「ああ。どんな困難があっても、二人で乗り越えていこう。」

和音は、桜花の髪に頬を寄せ、優しくキスを落とした。彼の言葉とキスは、彼女への揺るぎない愛情と、彼らの絆への確信を表していた。


理髪という日常的な行為を通じて、和音と桜花の絆は、また一層深く、強固なものとなった。それは、身体的な繋がりが精神的な絆を補完し、互いの存在を不可欠なものとしている証だった。十月の静かな夜が、二人の穏やかな寝息を優しく包み込んでいた。彼らの左手の薬指に輝く指輪が、暗闇の中で、二人の未来を静かに見守っているかのようだった。

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