第7話 佐藤くん、死んで!!

 教室の扉が開くと、包丁が見えた。

 ま、まさか!


 刃は俺に向けられていた。



「ちょ、え!」

「佐藤くん、死んで!!」


「うそだろ!?」



 諦めてくれると思ったが……そうではなかった。

 稲辺さんには明確な殺意しかなかった。



 ◆



「――――俺はどうなった」



 気づけば知らない天井を見上げていた。

 ここは……どこだ?


 起き上がると、そこには前島さんの姿があった。



「あ、佐藤くん。ここは保健室だよ」

「……前島さん、稲辺さんは?」


「稲辺さんは――知らない方がいいかも」



 ……え、いったい何が起きたんだ?


 それに、なぜか後頭部が痛い。この感じ、俺はなにかに頭を打ち付けて気絶していたようだな。


 稲辺さんは包丁を持って襲い掛かってきたはず。そのあと、俺は刺されたのか?


 いや、傷はない。

 あったのなら、もっと大事になっているはず。

 つまり、前島さんが上手く対処したようだ。



「教えてくれ」

「今は無理」


「……そうか」



 ・

 ・

 ・



 いったい、どうやって稲辺さんを止めたんだ?



 三日後、それは判明した。



 教壇に立つ担任が妙に暗い顔をして言った。



「――ああ、稲辺だが、転校することになった」



「はああああ!?」「マジかよ」「突然だな」「なんで?」「なんか事件を起こしたらしいよ」「えぇ……」「うそーん」「優等生だったろ」「ありえねー」



 そして、前の席の前島さんが真相を教えてくれたんだ。



「稲辺さんのこと話すよ」

「お、おう……」



 こっそりと耳打ちしてくる前島さん、あまりに良い声で俺はぞくぞくしたが――それより、あの時なにがあったのか、それを知りたかった。



 …………!?


 そんなことが!?

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