第三章 第七話
翌日は、数日続いていた雨が嘘だったように、空が晴れ渡っていた。
朝起きると隣に
昨夜は
庭の掃除を終えたところで、
待ちに待った青い空に、両手を広げて日の光をたっぷりと浴びた。
今日は
「事務室にキテネ、事務室にキテネ」
「事務室?
ぴーすけは肯定するようにぴぴっと鳴くと、パタパタと飛び去った。
事務室に入ると、
同じ布団で寝るくらいなんてことないと言っていただけあって、伊智はいつもと何ら変わらないように見える。
「
「ああ、
「え、いいんですか?」
今日は終日勤務の予定のはずだった。
「ああ、昨日も夜遅くまで働いてくれてただろ」
「でも、大丈夫なんですか? 人手が足りないんじゃ……」
休みをもらえるのはありがたいが、つい心配が勝ってしまう。
「大丈夫ではない。だが最近、上も勤務時間とか労働者の権利とかに、いろいろうるさくてな。足りない手は、どっかから借りてくるさ」
「まあ、そういうことだから、ゆっくり休んでくれ。たまには息抜きしないとやってられんだろう」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます。ありがとうございます」
話が一段落ついたようで、
「
「なに、そうか。うちの建物も古くなってきたからなぁ。妖に修理を頼んでおく。今日中には直るだろう」
「よろしくお願いします」
すると、傍で二人の会話を聞いていた
「濡れた布団は大丈夫なの?」
「朝洗って干しておいた。天気がいいから、夕方までには乾くんじゃないかな」
朝から大労働だったけれど、晴れてくれたおかげで助かった。今日も布団がなかったら、また寝床を探してさまよう羽目になっただろう。
「なんだ、雨で布団まで濡れたのか」
「はい。運悪く、ちょうど雨漏りしていた真下に置いてあって……とても寝れるような状態じゃないほど濡れてて、大変だったんです」
「そりゃ、災難だったなぁ。でも、それでお前、昨日はどうしたんだ? まさか、畳みの上で寝たんじゃないだろうな」
心配してくれているのだろうけど、前のめりに聞かれるとやや圧が強い。
「いえ、昨日は……」
慌てて説明しようとして、本当のことを言ってしまっていいのかと逡巡する。
「昨日は、
「借りたって……じゃあ、
驚きと感心の入り混じった顔で、
「違いますよ」
伊智が煩わしそうに否定だけするので、
「あの、わたしが
しかし、
「なっ……!?!? お前ら、一緒に寝たのか!?」
「えっ、そ、そうですけど……」
「同じ布団で? 二人で寝たのか?」
「はい……え? だって、半妖ではそれが当たり前なんですよね? 家族だろうと友達だろうと一緒に寝るって……」
それなのに、
困惑して、
「あのなぁ、
もはや呆れを通り越して、
頭の中で今言われたことをもう一度反芻して、完全に理解した。昨夜、
「そ、そんな……」
「
「ごめん、
笑いは収まったようだけれど、
「嘘つくなんて、ひどい」
「
「そうだけど……」
まさかそんな反論が返ってくるとは思っておらず、
「あれは……従業員として……! お客さんに心残りがないようにって……だから、善意で!」
「俺だって、善意だよ?
そう言って、
「そうかもしれないけど……でも……」
言い合いに決着がついたところで、
「まあ、仲良くやってるようで、よかったわ」
驚き尽くした
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