「伝説を狩る者達~狂った世界の後始末~」

低迷アクション

第1話

  「“JD”アフトマート!(機関銃の意)偽装がバレた。戦闘開始!」


「受け取れ!」


叫ぶ“ロズ”に呼応し、民家の窓から顔を覗かせた“JD”が自身の銃を撃ちながら、突撃銃を投げて寄越す。


素早く掴んで据銃する。JDが隠れていた家に巨大な光弾が直撃し、爆散したのは、その刹那の事だった。


「皆、JDがやられたよ。“あっち”はまだ力を相当残してる。各個散開しながら、目標へ前進!」


飛んでくる破片を避けながら、指示を出す。閑静な住宅地に不釣り合いなアーマーベストを着た男達が数人、銃を構えて移動する。


つい先程まで語らっていた仲間が次の瞬間、瓦礫の下…まるで最前線だ。奴等は簡単に、こんな状況を作れてしまう。


平時の世界には、全く持って不要…だから、狩らなければいけない。誰かが…


「ロズ、目標を確認。ホームタウンのどん詰まり、赤い屋根の上だ」


元南アフリカ特殊部隊の同僚“ボワセン”が銃のホロサイト(光学照準器)を覗きながら報告する。


「ダー!(了解)目標は男?女?」


“異世界からの帰還者”なら、男の方が断然多い。力のほとんどは更新できないため、現実世界で問題を起こす事は殆ど無しとされているが…


「女だ。髪逆立てて、魔女みたいだ」


「なら“元魔法少女”変身は?」


「いや、してない。けど、ステッキは持ってる。あの頃、伝説だった、彼女達は何処行った?血走った眼で俺達を探してる」


「私達じゃなくて、動いてるモノ全てが敵。隣人家族を殺したのが、そもそもの発端、警察じゃぁ、対処できないから、IGA(Integration government army 統合政府軍)がウチ(PMC“民間警備会社”)に依頼して、長閑なホームタウンを戦場に変えた」


「隊長(ロズの事)!!そもそも、こーゆう事案は、連中と同じ能力を持った奴が対応するって政策はどうなったんだ?」


警官をクビになって、この職に就いたとゆうか、この職しかなかった“羽田(はねだ)”が吠える。指揮官としては、どんな発言をするにしろ、もう少し、身を屈めるなり、遮蔽物に身を隠す事をおススメしたい。最も、家一軒吹き飛ばせる相手には意味はないが…


ロズの思考を体現するように、日本人にしては、大柄な羽田が光に包まれた。


「馬鹿な奴。オイッ、羽田死亡だ。その手の対応は外国が先。発生元は日本だが…人口の数とか、常任理事が優先だとよ。全く狂ってる。何で、俺達が魔法少女と戦ってる?」


「敵がイナクナッタカラテショ?私達の戦いと違う世界を見てきた、あの子達が平時の世界で生きるのは難しい。私の国でも問題にナッテル」


突撃銃を撃ちながら、“牧田(まきた)”と“イム”が身のない論戦を繰り広げる。能力者達の攻撃を受けた場合の生還率は極めて低い。自分達のような最前線のPMCなら、尚更だ。


どんなに鉄板を入れようと、軍用アーマー如きでは、対処は困難…彼女、彼等が現れてから数年経つが、対応装備は、まだ試作段階な上に高級、IGAですら、配備されているのは、ごく少数と聞いている。


その結果として、ひと昔前の銃乱射犯に対する戦術と同じ手を用いる事しか出来ない。


1回の仕事で還ってこれるのは半分…無駄口を叩きたる気持ちも分かるが、そろそろ決着をつけないと、近隣被害の請求額が保険で支払える範囲を超えそうだ。


「2人とも、お喋りはそこまで。合図の後に催涙弾を撃ち込む。ボワセン、イム、ランチャー用意。あの魔法少女が撃てるのは、後2発くらい“使い魔”無しの単独じゃぁ、撃てる数は限りがある。だから、一気にカタつけるよ」


「了解」


「流石、“伝説の狩人”いや、伝説を狩人だな。ロズ」


ボワセンが、こちらに笑いかける。否定したい気持ちを抑え、ロズは徐々に輪郭がハッキリしてくる魔法少女に銃口を向けた…



 「畜生…この、クソッタレ」


毒づく語気は強いが、屋根から庭に伸びた血の量を見れば、もう長くない事がわかる。ロズは垣根を越え、芝生に横たわる元魔法少女に近づいていく。


催涙弾で撹乱しての全力射撃…その、誰かの弾が相手を射抜いた。自身の体に防御する魔法を張るだけの力がないのも、幾多の戦闘で経験済みだ。


最も、元魔法少女の最後に放った一発がボワセンを屠ったのは頂けない。優秀な兵士だった。代わりはそういない。


「可笑しな世界だよ。私達が平和を守った。だけど、守ったと思ったら、敵がいなくなって、敵にされた。魔法の国は私達を見捨てた。人知阻害魔法(自身の素性を隠す魔法)は、ネットやSNS普及の社会じゃ、役に立たない。何が“平和を守ってくれた伝説の正義の素顔に迫る”だ?売名行為に利用され、隣人や職場からは化け物扱い。可笑しい、こんなの絶対、あり得ない」


「んなこたぁ、どうだって良いんだよ」


死相が既に広がり始めた顔に、こちらの顔を近づけ、囁く。部下達はまだ、催涙の煙に巻かれ、辿り着けない。絶好の好機だ。


“顔面の偽装”を解く。


「覚えてるか?私を」


「お、お前は?馬鹿な」


相手の顔が驚愕に見開かれる。最高だ。いつも、この瞬間がたまらなく好きだ。


その次の台詞は大体決まってる。


“私達(俺達)が倒した筈”


残念!生き残っていた。死ぬ瞬間に最高の絶望、種明かしを与えてやる。


全ての悪を倒し(してない、してない。のうのうと社会を謳歌しております)


平和を取り戻した世界(偽りだらけの)


役目が終わり(今度は狩られる側に鞍替え)


自分達は邪魔者になったけど(そうするように仕向けた。あらゆる媒体、手段を用いて)


人々の笑顔を、守れた記憶は変わらない。悔いはないって顔を砕いてやるのが、


ロズ(実は、このあだ名は逆さにすると、ちゃんと本来の意となる)の本懐…


全ては間違い、結局、最後は悪が勝つと言う事実を味合わせるのだ。


悔し涙で一杯になる頬を両手で挟み上げ、かつての彼女の名前で手向けを送る。


「さよなら、フラウ・ローテ、どうか、安らかな眠りを」


「…じ…ご…」


言葉途中で、完全に動かなくなった顔をしばらく見つめ、無造作に投げ捨て、顔面を偽装し直す。


「隊長」


良いタイミングで、牧田がイムと一緒に姿を現す。随分と時間が、かかっている。恐らく、隠れていたのだろう。


「後は処理班に任せ、我々は帰還する」


短く伝え、ホッとした表情の部下達と歩き出す。


自分も含めたあり得ない存在が現実化し、彼等の仕事を奪った現在、傭兵の補充には事欠かない。明日か明後日には、ボワセンのような精鋭が配属されるかもしれない。


一つの目的を果たし、気分が良い。考え方も前向きになれる。


加えて、この狂った世界では、力を抑えきれなくなった正義達の暴走はまだまだ続く。


全ての、同等の力を持つ悪を倒した結果…平和に向かいつつある世界においては、彼等が悪の役割を与えられ、孤立し、始末される運命を迎えている。


ロズが偽装し、一般社会に隠れるまで、10年かかった…この間、あらゆる勢力に属し、正義と戦った。恨みを晴らす相手にも事欠かない。


数分前のボワセンとの会話を思い出す。彼は自分を、伝説を狩る者と言った。それは違う。狩人ではなく、復讐者だ。


そして、この復讐は


「終わらない。まぁ、終わらす気もないけど?」


呟くロズに応えるように、眼前の町で新たな火の手が上がった…(終) 

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