異世界×現実〜僕の体が異世界令嬢の体と入れ替わる件について〜

空花凪紗~永劫涅槃=虚空の先へ~

00 モノローグなプロローグ

 私は運命の人がいると子供の頃から信じていた。白馬の王子様。伝説の勇者。そう言った存在に憧れていた。だけど、実際に会って失望した。


 王子は私の外見にしか興味がないし、勇者は女たらしだった。どちらも私に相応しくない。


 私の運命の人はきっと私だけを愛してくれる。そして二人の間には魂の繋がりがある。私はそう信じていた。


 17歳になった時だった。この世で最も知恵のある者が名乗れる大賢者という肩書きを持つアーシャ・ハイネッガーに会うことができ、彼女に私の運命の人を教えてもらった。彼の名はイチノセ・リョウというらしい。どうやらこの世界の人間ではないみたい。アーシャは投影魔法で彼の姿を見せてくれた。


 彼は見慣れない黒色の服に身を包み、椅子に座って、ノートにメモを取り、何やら授業を受けている。私はもう一目惚れだった。キリッとした顔立ちに凛々しい瞳。それに今まで見たことのない黒髪。頬杖をついてどこか退屈そうなその横顔でさえ愛おしい。


 私はアーシャに尋ねた。どうやったら彼に会えるのかと。彼女は答えた。「会うならラカン・フリーズの門を開ける必要がある」と。そしてこう続けた。「少し前にラカン・フリーズの門に小さな穴を開けたんだ。もしかしたら魂だけなら通れるんじゃないかな?」


 私は是非試して欲しいとお願いした。そしてアーシャは最新の魔法を私にかけてくれた。「試作品の魔法だからどうなるかわからないよ?」と釘を刺されたが彼に会うためだったら何だってするつもりだった。


 その日はアーシャと別れて家に帰った。いつものように夕飯を食べていつものように風呂に入って寝る。「明日は学校か。王子に会うの嫌だな」と思いながらふかふかのベッドに横になった。


 翌朝、目覚めると全く知らない部屋にいた。


「ここどこ?」


 その時、胸と股の下に違和感を感じて立ち上がる。


「あれ? 私の胸がない! しかもなんかついてる……」


 体を弄るも筋肉質で硬い。まるで男にでもなったみたいだ。部屋に鏡があったのでその前に向かった。そして気づく。


「イチノセ・リョウ?」


 運命の彼になっていることに。





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