掌編・『ほんとうに、純真無垢なふたり』

夢美瑠瑠

第1話


 

 …転校してきたリリーを、ユリは一目見て好きになった。

 「お人形さんみたいにかわいい子!」

 「鼻が高くて…肌が真っ白! 眼は、海の色みたいにあおい… ニンゲンになったばっかりの人魚姫リトル・マーメイドって感じ」


 いろんな思いがユリの中で交錯して、それはクラスメートたちも同様で、さんざめく喧騒は、どこか華やかな熱気を帯びていた。

 「リリー・オルレアンといいます。 日系のハーフです。 よろしく。 趣味、特技?はピアノで作曲することです。 今日から3組の一員になるので、緊張してまあす。 見た目が変わっているからっていじめないでね」

 たどたどしい口調で、一気にしゃべった後、最後にちょっとふざけて、お茶目に白い歯を見せた。

 拍手。

 少し赤面しつつ、流暢に挨拶したリリーの、その様子は初々しくて、愛らしく思えた。 


 ユリにとって、身近で外国人が実際に生活している、というようなシチュエーションは前代未聞で、なんだかワクワクするような興奮があった。

 

<続く>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る