君は、僕の知るたった一人の『特別』で。君を想う以外、僕には何もないから

 切なくて儚くて、とってもピュアなストーリーです。

 主人公の少年は、気づいた時には「ガラスのケース」の中にいた。
 なんらかの形で培養されるように生きていた彼。ようやくケースから出されるが、周りは白衣の研究者ばかり。
 自分は何者なのか。比較するような「他者」が近くにいない。

 そんな中で、彼は一人の少女と会う。唯一の『自分の同類』であり、似た境遇にあるとわかる少女。自然なことのように彼女と惹かれあう。

 もう、このシチュエーションがひたすら切ない。

 「外の世界を知らない」、「余分なものを一切持たない」というピュアな少年。

 そんな彼が「唯一知っている同類」である少女に恋心を抱いて行くという。

 「世界の狭さ=純真さ」という方程式が成り立って、その中で純粋な恋慕の念をはぐくむ。
 この少年が最後に迎える結末。この少年視点の最後の一文が、とにかく切ない。

 ただ、彼女のことだけを。選択肢などなく、参照する知識などなく、ただ目の前にいる「一人の人」を純粋に想う。

 胸を打たれずにはいられない、ひたすら純真で純粋な物語でした。

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