ペイズリー
Rie
― ゆらめく記憶の織り模様―
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幾重にも重なる線
やわらかに、くるり、ゆらり
ひとつの花にも 果実にも 涙にも似て
なにものでもないかたち
あのとき纏った
深い葡萄色の布のなか
ペイズリーが そっと踊っていた
まるで、黙って囁くように
音もなく 揺れる
心の奥で波打つ記憶
抱かれていたのか
ほどかれていたのか
もう、わたしにもわからない
けれど たしかに
あなたの目が 布越しに
わたしの輪郭をたどっていた
夜が明けて
すべてが影に戻っても
あの文様だけは
ずっと消えずにいる
名前のない感情を
そっと包むように
ペイズリーは今日も揺れている
記憶の、静かな肌ざわりのまま
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ペイズリー Rie @riyeandtea
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