5503の記録

抹茶ちゃふくについちゃっちゃ

【災訪者】

「ただいま…」

会社から帰ってきた俺は、誰もいない部屋に告げる。スーツとカバンを投げ捨て、おもむろにカバンから「解雇通知書」と書かれた紙が一緒にでてくる。

それを見て、思いっきりその紙を丸めてゴミ箱に投げ捨てた。

「もう君はこなくていいよ」

マイクとスピーカーの距離がいけなかったのか、うるさいハウリング音が響き渡る。

プレゼンテーションはまるで台無し。

相手の企業は、機嫌を損ねていた。

で、これだ…

滞納している家賃も今月も払えないまま。そろそろ追い出されてもしかたない

俺はこの世にはもううんざりしてた。

「アメリカでは、相次ぐ謎の失踪じ」

いつしかつけたラジオを消して、部屋の中は完全に静かになる。

あと2年ほどでで皆のすとらなんとかの予言で逝ってしまうというのに、

景気が低下し、湾岸戦争とかいろいろおこってて…何もかもがめちゃくちゃだ

なのに、必死に生きている。

なぜそこまでするのか、その意味がいまいち俺にはピンとこなかった。

どうせ、このまま終わるんなら

「なんか面白いこと起こんねぇかなぁ」

そんなことを漏らしながら、ベットに転がり天井を見つめる

シミだらけ。相変わらずきったねぇな。

そんなもんはみたくないんだよーって誰かに話しかけてみる。

部屋には当然おれしかいない。

「はぁ」ため息が出る。

俺は目をつぶり、眠る

最近は、ひどい夢を見た。あまり詳しく思い出したくもない。

まだガキの頃は楽しかった、あんときはなにもかも目新し、

ピンポーン

チャイムが鳴った

ピンポーン

はぁ…こんな時間に誰だよ。俺は新聞受け付けてねぇのにさ。

もうすこしで眠れそうだったのに、

「何邪魔してくれてんだよ!」

扉をわざと音を立てながら、開くも誰もいない。

目をこすってもそこには、誰もいない。

「あれ…疲れてんのか俺…」幻聴だったかな

でも、紙の音が下で聞こえた、何かを踏んだ音だった。

下を見てみれば、変な封筒が足の下にあった。

封筒には、A-SYNCと書かれたの文字。

どこの会社だ?

封戸を開けて中を確認してみる。中にあったのは、一枚の紙と地図が入ってた。

「なんじゃこれ」


〈数日後…ある郊外にて〉

「地図に頼ってきてみたけれど…こんなとこにバカンスの場所があるのかぁ?」

封筒に入ってたのはでかでかと書かれた、

〈 バカンスのご招待‼ 〉

「日々苦労する世の中で、頑張ってるあなたにご褒美を‼ 我々A-SYNC社は、特別に選ばれた一人であるあなた様に住みよいバカンスの旅をご提供します‼ 代金は必要ございません‼ 地図に書かれた場所までぜひきてください あなたをきっと楽しませるでしょう‼」

正直、胡散臭いにもほどはあるが気になって仕方なかった。何より俺は暇してたからな。持ってきたのは、服を詰めたキャリーケースと小さいバッグとカメラ。

ここまではタクシーを経由して、歩いてきたが…

「ほんとにこんなとこにあんのか…?」

周りには、砂しかなく何もない。

足はすでに疲れ果て、しんどくなってきた。足を上げ、足を上げ、

それを繰り返して、この道を歩く。すこし坂道になっているようだ。

ゴロゴロと硬いタイヤが舗装されてない道で音を鳴らす。

へぇへぇと息を荒げながら、太陽に照らされる

夜中に出たはずなのに…もう朝になってやがる

坂道を上がり、そしてやっと、なんか見えてきた

「あれかぁ…?」

見えてきたのは有刺鉄線が巻き付けられたフェンス。

一応確認してみるも

「ここっぽいな…」

いかにもバカンスとは程遠い、フェンスに囲まれた小さな白色の建物がぽつんと一つ離れていた。

これ以上、道は続いてないようだ。

俺は検問所みたいなとこに行き、誰かいないか探すも…人の影は一つも見えない

「これ勝手に入っていいのか…?」

正直、もうここまで歩き出来たわけでもうヘトヘト、日光にも照らされて

持ってきた水も飲みほしてた。

俺は歩き出し、その建物のほうへ行く。

その建物、最初はホテルの入り口かと思ったが

「どちらかといえば、地下鉄だよな…」

そんなことを漏らしながら入り口に入った。

だが、内観は暗く蛍光灯は下に破片を撒いて落ちていた。

俺が想像していた南国のような場所とは相反して、地下鉄みたいな…

それ以外なく、あるのは地下へ続く道だけ。

「来る場所間違えたかぁ…」

どこで道を間違えたか、順番にたどるために地図をもう一度出す。


ぎゃあああぁぁぁっぁぁっぁぁぁあああああ゛あああああ゛あああ!!!


えっ…

悲鳴が聞こえてきた…というか人がいるのか?

いや人は絶対にいるはずだ、なぜならあの紙には「選ばれた」と書かれていた。

少し中に入りゴクリとのどの音を鳴らして、目を大きくあけながら、身を乗り出し

階段の下を確認する。

暗闇で、一寸先は何も見えない。

恐怖がより増大するがそれと同時に好奇心も湧き上がってくる。

「一体、なにがあるんだ?」と

俺は、これまでいろんなジャンルの映画は見てきた

大体のシナリオはわかりきってる。

それに身を隠す方法も会得している…泥さえあればだが…

キャリーケースは…一応持っていこう。囮として使うか

俺は下に続く階段を一歩一歩下がっていった

どこまで下がっただろうか、全然終わりが見えない。

何もないのが余計に怖くなっていく。

あれから悲鳴もないも聞こえない。ただあるのは暗闇だけ

上を見れば、わずかな光がさしているだけだった。

でも、ここから上に上がるとなると相当大へ

ズガガガガガガガガッ!

「うおぉ!!」

足を崩して滑ってしまった!

足を広げて、何とか止まらせる。

「ふうぅ…あっぶね」

なんとか止まった。少し腰は痛めたが、なんとかなったようだ。

キャリーケースもちゃんとつかんでる…

「あれ?」

ふと下を見れば、光が見える。

やっと着くのか…少し長かったが、ようやく見つけたようだ。

俺は足元に気を付けながら、一気にかけ下がり、地面に足を置いた。

ほこりを払って、前を見れば

「なんだぁ?ここ…なんかの監視室か?」

前面には、下がのぞけるガラス張りの監視室のようなマイクとボタンが付いた場所にでた。下には、実験室のような白いタイルが貼られた部屋が一望できた。

そして、真ん中に謎の開けっ放しの扉?がある。

「どちらかといえば、エイリアンとか研究してる場所だよな…」

「プレデターの死骸でもあんのかな…」

まわりを見まわすも誰もいないし、血が付いた後もない。あるのはさらに下に降りれる階段が、この監視室の端にあるだけ。多分下の実験室とかにつながってるのだろう。

多分、ここにさっきの悲鳴を上げた人はあの扉の先にある部屋か…

下に降り、謎の扉を調べる。

そこからは黄色い謎の部屋が続いていた。

トリックアートってやつか?でも見た感じであれば、全然そんなことはない。

本当にそこに部屋があるようだ。

でも…後ろを見てみれば何もないかのように、木の板が一枚張られているだけだった。これ本当に繋がってんのか?

扉の先を凝視して、調べてみるが…本当に不思議だ。

「何が起こってんだ?」

顔を限りなく近づけてみる。

ドンッ!

誰かに後ろから押された?!

思わず、倒れて中に入ってしまった。

「おい!誰だてめ…」

あれ?あれ?あれ?扉が…ない!!

「はあ?!どういうことだ?!」

後ろには、壁しかなかった。あの実験室もなにもかもなくなっていた。

あたりを見回せば、黄色い壁が何枚も無造作に置かれた部屋が奥まで続く

気色悪い音がうるさく耳に入る。

「おいおい…まじかよ」

自分に何が起こったか全くわからず息がさらに上がる。何もないとは限らないが、気味が悪すぎる!

「意味わかんねぇよ…」

ジーーッ

蛍光灯が劣化してて、ハム音が耳に入ってくる!気がおかしくなりそうだ!

「うるせえぇ!マジで何なんだよここ!!」

俺の声はこだまして、奥まで響く…

ふぅーふぅー…

息を整えて、周りをもう一度見る。

下にはキャリーケースと黄色い服があった。とりあえず、拾ってもう一度確認する

…なんもなさ

「おおいいい!助けてくれぇぇおおおい」

人…?人か?壁の向こう側から聞こえる

そういえば悲鳴があったな…無事か?とにかく人がいてよかった…

「大丈夫ですか?!」

俺は、声が聞こえるほうに走っていく。

よし…人がいればなんとかなりそ…


たすけでぇ…?


黒い…?化け物?


ぎゅおおおおお゛おぉぉお゛ぉおおぉぉおおぉぉぉ゛おおおおん!!!


「うわぁぁっぁ!!!!」

なんだあいつ!やばいやばい!あいつ追っかけけてくるぞ!

クソクソクソクソクソ!バカンスって話どこいったんだよ!!

クソッ!!こんなとこで死んでたまるかよ!

ガタッゴダンッ!

キャリーケースを思いっきり後ろに投げ捨てた。

バケモンは、気を取られてそっちのほうに歩いて行った。

今のうちに逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる…にげる…にげる…

「ハァハァ…ここまでくれば…大丈夫だろ…」

息をさらに荒げながらなんとか、逃げ切った…

胸がバックで痛い…汗だらけでもう足が痛い…

どこだよここ…もしかして嵌められたのか?俺…

ただ一人、この気味悪い黄色い壁によっかかって倒れる俺だった。

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