贖罪の篝火

ねりうむ

プロローグ

 ふたつの影が踊る。

 弾きあい、交差し、また弾きあう。

 黒い尾を生やした影が、もう一方の影へ尾を叩き付ける。

 一撃。

 放たれる黒い殺意は、抵抗もなく地面をえぐり、穿つ。

 二撃。

 遅れて轟く爆発音が、大地を震わせる。

 三、四撃。

 逃げ場を削るように繰り出される連撃。

 白銀の双角に、赤い双眸。

 飛散する瓦礫の中で、九尾の影は楽しげにわらう。

 五、六、七、八――。

 地を這う蛇のように、あるいは急襲する鷹のように、暴力の嵐が絶えず襲い来る。

 もう一方の影――黒髪の女、かがりが斧を構える。

 篝は、変わり果てた親友へ向かい駆け出した。

 迫りくる尾を、受け、弾き、叩き落とす。

 軌跡に彼岸花のような火花が散った。

 九撃目。

 渾身の力を込めた、尾の一撃が放たれる。

 篝は流れるように躱し、逆に相手の懐に滑り込んだ。

 九尾の影の顔が、驚愕の色に染まる。

 刹那と永遠が交錯する。

 更に一歩、足を踏み込み、横薙ぎに斧を振るう。


 闇夜に一筋の閃光が疾走はしる。

 これは、いつか未来に待ち受ける出来事。

 篝と親友――夕霧との最期の一瞬だった。 

 

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