第4話ギルド交渉とできる女


## 第四話:ギルド交渉とできる女


 喧騒。活気。熱気。混沌。


 城門をくぐった途端、レオンの全身に新しい世界の鼓動が流れ込んできた。


 市場にはさまざまな種族の商人が並び、異国の言葉で値段を叫ぶ。通りの片隅では、小さな子供が魔法の火花で曲芸を見せていた。建物は石と木材で組まれ、立体的に重なり合い、空中通路まで続いている。


 現代日本の街とも違う、まさに“異世界”の都市風景。


「こりゃすごい…って見入ってる場合じゃない。」


(まずは、ギルドだ。)


 金がない。所持金は露店でのボロ布購入と水分補給で底をついていた。


 路上生活を避けるには、仕事が必要。そして、仕事を得るには――


 “冒険者ギルド”に登録するしかない!てか身分が無い!


---


 ギルドの建物は中央通りを抜けた先、石造りの大きな建物だった。


 門前には大剣を背負った獣人や、杖を携えたエルフ、魔道書を手にしたローブ姿の少年などが集まっている。


(いかにも、“冒険者”という感じだな)


 ギルドの大扉をくぐると、中は二階建てのホールになっており、受付がいくつか並んでいた。依頼掲示板には、討伐、探索、護衛といった仕事が貼られている。


 しかし――レオンが向かったのは、ひときわ忙しそうにしている窓口ではなかった。


 彼が目をつけたのは、一番端、暇そうにしていた女受付官だった。


 深紅の制服、黒髪のポニーテール、研ぎ澄まされた視線。看板娘のような可愛さはないが、“できる女”という雰囲気が漂っていた。


「登録を希望します」


 そう声をかけると、彼女は手元の用紙を指差した。


「登録には身分証か紹介状、もしくは訓練証明書が必要です。あなたは?」


「……ありません」


「……そう。なら、登録費用として銀貨十枚。それと面談」


「持っていません、金も」


 彼女の眉がピクリと動く。


「それでは、登録できません。ギルドは慈善団体ではありませんから」


「でも、“人材登用の裁量権”は受付官にあると聞いていますが?」


「……どこで?」


 受付官の目が鋭くなる。レオンはにっこりと笑って答えた。


「門の前で、情報屋と少し話しまして」


「……なるほど。で?」


 レオンは、懐から薄いメモ紙を取り出した。昨日、ヴァルドの荷車の裏板に隠されていた“物資密輸ルート”の記録だ。透夜がこっそり目に焼き付け、《記憶再現》で再生したものを、手書きで写した。


「“今朝、南の街道を通ってギルドを通さず武具を搬入したキャラバンがいた”。――これが正しいとすれば、ギルドの規定違反ですね?」


 受付官の視線が鋭くなった。


「……証拠は?」


「まだありません。ですが、ギルド登録さえしていただければ、証拠を“探してきます”。無料で。ギルドの信用を取り戻すために、ね」


「おもしろいことを言うわね。金がなく、身分証もない。なのに、自分を役立つと言い切る」


 彼女はゆっくりと、レオンの前に座った。


「名前は?」


「レオン・グレイフ」


「“グレイフ”……偽名でしょ?」


「もちろんです。どこから見ても本名っぽい偽名だと思いません?」


「じゃあ、こうしましょう」


 彼女は卓上に書類を広げた。


「あなたがこの街に関してどこまで知っているか、私が質問します。答えられたら、仮登録の許可を出してもいい。もちろん、答えられなければ即退場」


「分かりました、いつでもどうぞ。」



---


「この街の名は?」


「ルエスト。第二階層、冒険者ギルド“蒼穹支部”のある都市。」


「この都市の警備隊長は?」


「カイル・ドレイク。……あまり評判は良くないようですが?」


 受付官の目が、じわじわと変わっていった。


「……情報源は?」


「野営地の露店商、荷車のヴァルド、門番の会話、そして情報屋から“情報の引き出し方”を見て学びました。聞かなくても、“仕草”から分かることも多いです」


「……あなた、何者?」


 レオンはにやりと笑った。


「あなた方が評価するのは“能力”であって、過去ではないはずですよね?」


「……面白いわ」


 受付官は椅子を引き、ゆっくりと立ち上がった。


「私の名はミーナ・バルフォア。蒼穹支部の審査官兼情報管理官。あなたのような口だけの詐欺師――いえ、嘘つきを、この街で初めて見るわ」


「なら、光栄です」


「仮登録を認めます。ただし、一週間以内に“有用な情報”をギルドに提出すること。その情報の正当性が確認されなければ登録は無効。……いい?」


「それで十分です。僕にとって、“嘘が真実に変わる一週間”になりますから」


 そのやり取りを遠巻きに見ていた他の冒険者たちの間で、ざわめきが起きる。


「あいつ、ミーナに交渉で勝ちやがった……」


「見たか? あの笑い方……ただのガキじゃねぇな」


「今後が楽しみだな……」



 ミーナは、書類を記入してレオンに差し出した。


「ようこそ、レオン・グレイフ。ギルドへようこそ。あなたの“その頭”が、あなたをどこまで運ぶか見せてちょうだい」


---


 ギルドカードの仮登録証を手にしたレオンは、その金属片をじっと見つめた。


「できれば、そのまま登録完了!とかだったら楽だったけど…まぁ及第点か、さっさと行くか!」






**(第五話へ続く)**





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最後まで読んでくださりありがとうございますm(__)m

いや~、レオンの能力便利ですよね、作者的にも後出しができるからいいんですよ、「あの時見た」的なことを書けばその前に書いてなくても書けるっていう。

今回からこの物語に出てくるキャラクターの豆知識的なことを書いていきます、今回はレオンだよ!


①レオンは猫が好き。

レオンはね猫を見るとついつい触りたい衝動に駆られるんだよ。

②レオンは甘いものが苦手

甘いものが苦手ってよりかは甘すぎるのが苦手だよ。

③レオンは最初出てきた神のことを友達がいない暇人だと思ってるよ。


終わり!第五話も楽しみにしててね~!


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