紙ふうせん
Rie
― 風にとけた手紙 ―
---
ぽん、と鳴り
夢のはじけた 午後三時
紅(くれない)うすき
紙ふうせんの 気がかり
浮いたり沈んだり
あの子の息でふくらんだ
ひとつ ひとつ
何も書かれていない願いが
空をみていた
透けた色
うつしたのは 花火の記憶か
夏のはじめの 約束か
それとも だれかの
忘れられた さよならか
からん と 風鈴が
鳴ったのち
ふわりとそれは 庭に消えた
落ち葉の上
紙の夢が しずかに
折れたように 眠っていた
そしていまでも
ふと風の音が やさしいと
あの午後の 空気が
胸に ふくらむ
ぽん、と鳴り
今日もひとつぶ うたかたが
あゝ どこへも 届かずに
---
紙ふうせん Rie @riyeandtea
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます