公爵様は引きこもり令嬢の幼なじみを溺愛する

春莉

①前世の記憶

グレイ侯爵家のルーナは、人見知りが激しく人と目が合うだけで赤面してしまう。

それに加えて、見た目も銀色の髪で癖毛がひどい。


視力も悪く眼鏡をしているので、"老婆"と通っていた学園で男子にからかわれてから人との関わりが怖くなり、引きこもりになってしまった。


日本で言えば、イジメにあって不登校になってたってことよね。


それから、14歳のルーナは2年間学園に通えなくなってしまう。


小さな頃から家族ぐるみで仲良かったヒューズ公爵家のアレン様からは手紙が届いたり、屋敷に来ていただいたりしていたけれど外には出られなくなってしまった。


アレン様はとても心配してくれたけど、こんな容姿じゃ老婆だって、気持ち悪いって言われちゃうからアレン様にも会いたくない…


ただ、家族に恵まれたルーナは父や母に愛情深く育ててもらったので、性格まではひねくれなかったのは良かったと思う。


16歳になったある日、ルーナは突然頭痛がして倒れてしまう。

その後からルーナの意識は途絶えてなくなっちゃったような気がするのだけれど?


しかも、消えたいって声が聞こえて

ルーナと”私”は入れ替わってしまった。


だからもう今はルーナじゃない。


前世の記憶の"私"は、木之原みのりという日本人だった。


それもなんの取り柄もない35歳の主婦。

自分には子供もいたような記憶もあるけど、もうよく思い出せない…



「ルーナお嬢様、大丈夫ですか?」


急に倒れてしまったので、ルーナ付きの侍女のサラは心配そうにベッド横に立っていた。


ルーナとしての記憶はあるのだ。

だから侍女のサラのことも認識できる。


「サラ?ここは?」


「ルーナお嬢様のお部屋ですわ。

急にお倒れになったので、旦那様と奥様も心配されております。

意識が戻ったので旦那様とお医者様にもお伝えしてきますね。」


サラはそう言うと、すぐに部屋から出ていってしまった。



ルーナは、静かになった部屋を見渡すと日本との違いに目を輝かせた。


「とにかくすごい部屋ね。」


広く綺麗な部屋。


窓から見る景色はまるで日本とは違う。


なんだかテンションが上がってきてしまう。



日本との違いにテンションがあがりつつもふと疑問に思う。 


たしかルーナって、容姿が嫌で外に出たくないと悲しんでいたのよね。


一体どんな容姿なの?



「ルーナ」


急に"バタン"とすごい音がしたと思ったら父と母に抱きしめられる。


「動いていて大丈夫なの?」


母はとても心配そうにしている。


だけど、私はなぜか他人のような感覚に襲われる。


両親とルーナは家族でも、今の”私"にとったら他人だものね。


少しためらいながらも

ルーナは笑顔で頷いてみせた。


医師にも異常ないと言われると両親は安心したようだった。


そしてサラには鏡を持ってきてもらえるよう頼んだ。


サラは一瞬驚いた顔を向けるも、すぐに鏡を持ってきてくれた。


サラから鏡を受け取るとルーナは鏡を覗き込んだ。


あらら。

これは…


鏡に映るルーナはまさに"老婆"のようだった。


これでは消えてなくなりたい気持ちが、なんとなくかわかるような気がする。


今までルーナもたくさん容姿のことで傷ついてきたのだろう。



それに鏡を見るルーナの姿を父と母、サラには憐れんだような顔をされる。


ひどい。

両親や侍女すら同情するのか。


ルーナは両親やサラから目を逸らすと目を伏せた。



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