再会した初恋はあと1ヶ月でした
春木維兎 -haruki-yuito-
再会
命尽きるその時まであなたを愛します。
「…あああああっ!!」
春奈優里亜(はるなゆりあ)今日から花のJK!
の…はずだったのに。
また…倒れました。
持病持ち。5歳のときに病気発覚。
そっから…何年だろ。
11年。ずっと病院のベットだった。
今でも薬品の匂いが漂っている真っ白な部屋にいる。
やっと、高校から遊べると思ったのに…。
家でまた倒れた。
好きな人に会いたい。
毎日会いに来てくれた…優しい人。
今日…会えるはずだったのに。
「優里亜ちゃん。おはよ。また来たよ」
「優里亜ちゃん!今日はお庭の花持ってきた!」
「高校生になったら…会いに来るね」
そう言って…10歳の春。彼は来なくなった。
それから、何度も…何度も季節が巡った。
「…会いたいなぁ…」
ぽつりと言う。
「誰に?」
…そう言えば名前知らな…え?
首が取れるのではないかというほど早く首を回した。
ぽかん…と黙っていると…
「優里亜ちゃん、来たよ。約束、果たしに来た」
そこには…彼が立っていた。
大人っぽくなって…白衣を着てる。
「あなたは…っ」
「俺は向井春馬(むかいはるま)。優里亜ちゃんの専属医師になった」
向井…春馬…。
「え…歳…は?」
私と変わらないくらいの身長だったのに…。
「24。優里亜ちゃんの9個上。」
「…えっあの…小さい男の子が…」
本当に小さかった。私が…162センチ。
彼は…変わらないくらいだったのに…今は180くらいある。
「こら、小さいって言わない!気にしてたんだよ〜?俺だって。」
軽くおでこを突かれた。
「ご、ごめんなさい…?」
すると、にこにこと笑って。
「さ、検査しよっか?」
「うん」
毎日してきた検査。
もう慣れた。
「…なにこれ。」
知らない機械がある…。
「ん?ああ、これは…」
細かく説明してくれる。
新しい機械だそう。
「痛い?」
別に痛いことは関係ない。
ただ…覚悟がいる。
「痛くはないと思うよ。」
何その曖昧な答え…。
じと…と先生を見る。
「なんだよ…痛くないって」
「ならいいや!」
そう笑って、機械を受ける準備をする。
「…さ、始めるよ」
「ね、なんで先生は先生になったの?」
「え?」
急に気になった。
「ん〜そうだな。俺、優里亜ちゃんの病院治したいんだ」
「…えっ?」
私のため…?
「ほら、前まで来てたでしょ?」
「うん」
前と言っても5年以上前だけど。
「俺、話してるなら勉強して治したいって思って。」
「…そっか、治らないんだーって言われてきたから嬉しい。」
ニカッと笑う。
「…絶対…治すから。」
「ありがとう。私、頑張るね。」
こういう…真っ直ぐなところに惹かれた。
私の初恋…。
数日後。
「え…?それはどういう…」
「だから、春奈優里亜の命はもう短いんだ。」
春馬はそう…院長から言われていた。
「…そんな…」
「だが、その時間をもう使うか…どう幸せにするかは君次第だ。」
院長は言い切った。
「はい…失礼します。」
しばらく…春馬はドアの前で立ち尽くしていた。
手は血が滲んでしまうのではないかというほど強く握っている。
「くそ…っ!何のために…ここに帰ってきたんだ…っ」
ガラッ
「あ、おはよ〜!春馬せーんせ!」
「ああ、おはよう」
なんか元気ない…?
優里亜は心のなかで疑問を抱いていた。
「…検査、何時から?」
「午後だから午前中は好きにしてていいよ」
無理やり明るくしてる気がする。
「…私、もうすぐ死ぬんでしょ?」
「…え?」
なんで…というような顔をしてる。
「あれ、当たり?」
はちゃけたように笑う。
「…すきだよ」
…え?
突然…先生に言われた。
声は震えてて少し苦しそうで…。それでも愛が伝わった。
「どういう…」
「好き…ずっと…ずっと好きだった」
驚いた。片思いで終わっちゃうと思ってたのに。
「わ…私…私も…好き…ずっと…」
視界がぼやけてきた。頬は塩辛い水が流れてる。
「…っ」
春馬先生が愛情にあふれた顔をしたと思ったら…先生の顔が私の顔の横にあった。
「…っえ?」
抱きしめられてる…。
「…もし…体調いい日があったらさ、どこか…一緒に行かない? 俺、ずっと連れて行きたい場所があるんだ」
…っデート…?
「行く…行きたい…っ」
彼の体温と…肩の広さを改めて知る。
5年以上前の肩の広さとは比べ物にならない。
優しさ、真っ直ぐな性格は変わらないけど、身体は男の人になってる。
そう思うと、心臓が早くなる。顔が熱くなる。
この顔の熱さも、心臓の速さも、全部…私の〝生〟を表してる
「じゃあ、俺、他の人の検査行ってくる。また午後にね」
彼の体温の名残を抱きしめながら、そっと手を振る。
顔に残るこの熱も、胸の鼓動も、全部……“今”を生きてる証。
この余韻を、どうか、ずっと忘れませんように。
「…今日行くんでしょ?どこ行くの?」
それから更に数日。
彼とは毎日話して愛情をもらってる。
この日常がいつか途絶えるのが怖い。
でも、嬉しい。
「行ってからのお楽しみ。」
口元に人差し指を当てて言う。
「え〜?言ってよぉ」
「ないしょ!行こ、車椅子乗って」
言われた通り、車椅子に乗る。
「着いたよ。」
「…わぁ…」
目の前には青い海に夕焼けが映っている。
初めて、海を見た。
「綺麗だろ?俺、ここ好きなんだ。お気に入り」
「連れてきてくれてありがとう。また、連れて来てくれる?」
来れるか確信はない…けど思い出をできる限りたくさん…1秒でも長く一緒にいたい。
「もちろん、何度でも。」
次の朝、春馬先生は来なかった。
「…ねぇ、春馬先生は?」
「君に伝えないといけないことがある。春馬先生は…」
先生の言葉が止まる。
…やっぱ…死ぬのかな。
「君の…余命についてだ…」
その先生は話始めた。
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