(参考)男爵領の人口・経済・財務

16世紀~17世紀の中世ナーロッパ。

人口は1500年約6160万人から1600年には約7800万人に達し、その後1650年頃には7460万人程度に減少。


地域差も大きく、

イングランドなど北西欧では1500年から1650年で人口が2倍以上に。

ドイツ・イタリア・スペインなど中部・南部では 三十年戦争(1618–1648)の影響で人口の25〜40%を失う地域も。


17世紀ヨーロッパでは1歳までに少なくとも5人に1人の乳幼児が死亡。


16世紀には封建地代から貸地料(資本制的地代)への転換が進み、

各地で領主は土地を資本家や富裕農民に賃貸し、高い定額地代を得る方式が広まる。




<男爵領(Barony)>

●人口動態

 一人の男爵が支配する所領で、1つの荘園(マナー)またはいくつかの荘園から構成。

 民人口は数千人程度から多くても数万人規模。

 領内には領主の館や小さな城塞を擁する村落と周辺の農村がある程度で、人口1万人以上の都市を含むことは稀。

 都市化率はほぼゼロに近く、領民の大半は農民(農奴も含む)。


●経済

 男爵領の経済基盤は地方的で自給自足的な農業が中心。

 領内の土地利用はほとんどが耕地と牧草地で、穀物・野菜の栽培や家畜飼育。

 領主直営地があればそこから小規模な農産物余剰が生み出され、市場で販売されることもあるが、生産高は領内消費が主体。


 森林も領地内に含まれる場合、薪炭や建材の供給源となり、狩猟や豚の放牧などにも利用。


 生産性は低く、穀物の種子1に対する収量は5〜7程度。


 交易に関しては、男爵領レベルでは領内や近隣の市町村との地域内交易が中心。

 領民は近郊の市場町で農産物を販売し、塩・鉄製品・布など生活必需品を購入。

 

 領主自身も特産品(例えば森林からの木材、葡萄酒や羊毛など土地に応じた産品)を周辺に売ることがありますが、国際交易への直接的関与はほとんどなし。


 租税体制については、男爵領の領主は自らが統治者として農民から諸租を徴収。

 「税」というより封建地代。

 農民は土地保有に対し地代を納め、労働奉仕(賦役)や収穫物の一部を年貢として領主に上納。

 加えて領主は領内での粉挽き・醸造・パン焼きなどに独占権(バナリティ)を持ち、農民は領主の水車やワイン圧搾機、かまどを使用する際に利用税を支払う必要があった。


●財務収支

 男爵領の財政は、領主個人の家政収入とほぼ同義で、公的・国家的な財政機能は未分化。

 

 ・歳入

  年間歳入:1,000 – 10,000 リーヴル

  一人当たり歳入の目安:1 – 6 リーヴル

  領主直轄地から上がる収穫(地代)と領民からの各種の貢納。

  具体的には、

  ・農民の地代

  ・年貢収入

  ・領内市場や通行路から得る通行税・市場税

  ・小規模な関税的徴収(橋・関所での通行料)など

   ※街道の関所収入なども微々たるもの

  

 ・歳出

  領主の身分に見合った私的・公的支出が中心。

  小領主とはいえ軍事的義務があり、封建領主として上位君主への軍役奉仕またはその代替として軍役税を納める必要がありました。

  具体的には、

  ・領主自身や従者(騎士・兵)の装備・維持費用

  ・は領主の館や城の維持、召使いや家臣への給与

  ・領主一家の生活費(衣食や贅沢品消費)

  ・威信を示すための出費(衣服調達や宴会開催、領主間の社交費用など)

  ・公共事業的な支出は小規模

   領内の教会や礼拝堂の整備、農村インフラ(用水桶や橋)の修繕程度


 男爵領の財政は小さく、自給的経営で余剰が少ないため、

 戦争や凶作時には収入が減って支出超過に陥りやすかったのです。

 このため領主はしばしば借財に頼り、都市の金貸しや富裕商人から

 高利で借金することも珍しくない。



(通貨換算の目安)

 ・1英ポンド ≈ 24フランス・リーヴル(17世紀相場)

 ・1ラインターラー ≈ 3 – 3.5 リーヴル

 ・1ドゥカート/スキュード ≈ 3 – 3.2 リーヴル


中世の貨幣の名前って分からないですね。。。


>17〜18世紀に “フランス・リーヴルと言えば、

 フランス・リーヴル・トゥルノワ(livre tournois)

 王領フランス全域(13世紀末〜1795年)

 1 livre = 20 sols = 240 deniers


>リーヴル・パリジ

 中世パリ周辺(12〜17世紀初頭まで併用)

 1 livre parisis ≈ 1.25 livre tournois

 1667年に正式廃止。


>プロヴァンス、ブルターニュ、サヴォワなどの「リーヴル」

 各地方で独自鋳造

 地域によって補助単位や銀量が異なる

 17世紀以前は為替換算が必要。


>フランス革命期「フラン」

 1795年導入。

 1 franc = 100 centimes ≈ 1 livre tournois

 革命でリーヴル体系が廃止されフラン制へ。

 



<オルタニア王国貨幣との通貨換算>

 ※オルタニア王国の貨幣は、フランス・リーヴルを参考にしてます。

  1クラウン金貨=20シリング銀貨=240オボル銅貨


・1リーヴル ≒ 1シリング銀貨(オルタニア)、

・1ターラー/ドゥカート ≒ 3〜3.5シリング銀貨(=約1/6クラウン金貨)、

・1英ポンド ≒ 1.2クラウン金貨(または24シリング銀貨) 


本編で、物価設定のミスがありましたので、計算しなおして修正します・・・

お待ち頂ければ幸いです m(_ _)m

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