欲望とミメーシス
k3k3
第1話 通勤時間
かの偉人は言った。欲望は他人の模倣である、と。
ならきっとこの気持ちも誰かの模倣なのだろうか。
「金がねえなぁ。」
ガタガタ揺れる乗合馬車の上。
ミメーシスは木の板を張っただけの椅子に座り、尻の痛みをごまかすように干し肉に齧りつきながら愚痴をこぼす。
「毎日職場と家の往復しかしてねえし、これといって趣味もねえしなぁ。
はあ、仕事辞めたい。でも貯金もねえしなぁ。」
この男、ミメーシスは魔法陣作製家をやっている。
魔法が個人に依存する時代は終わりを告げ、魔力さえあれば誰でも使える魔法具は今や人々の生活に欠かせないものとなった。
魔法具には期待する魔法を発現させる魔法陣が書き込まれる。
それを生業とする職業が魔法陣作製家であり、今最も需要が高く人気の職業となっている。
しかし、人の世は常。光あれば闇もあり。
魔法陣業界は専門の学問を修める必要も無く、他業種からの転職も多い業界ゆえに人材や企業も混合玉石。
「悩んでも仕方ないし、明日も仕事。とりあえず帰りに酒場で一杯飲んで帰るかぁ。」
この男ミメーシスはその下層、3次下請け企業に勤めるしがない凡夫であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます