第4話 頑張って

「話は終わりね? 私はあくまで様子を見に来ただけだから」


 レオラはそう言うと、すぐに部屋を出ていこうとする。


「ちょっと待って」

「まだ何かあるの?」

「ううん、その……エイナに魔術を教えてくれたことは感謝してる。お礼を言ってなかったから。ありがとう」

「別にいいわ。それより、この後頑張ってね」

「……?」


 言葉の意図がよく分からずも、手を振って去っていくレオラと別れた。

 ――エイナを魔術師として育て上げてくれたのは彼女なのだから、感謝の気持ちは忘れてはならない。

 そうして、レオラの代わりに部屋に入って来たのは――エイナだった。

 エイナはそそくさとルリィの傍に寄ると、再びエイナを押し倒す。


「!? ちょ、ちょっとエイナ……?」

「今回は違います。先ほどは我慢できなくて押し倒しましたが……師匠の身体は魔力の調整をまだ自分ではできないはずです」

「魂と肉体が違うから――その話については理解できるけど、押し倒す意味は……?」

「もちろんわたしが調整役だからですっ。魔力の調整をするので、こうして密着させていただくわけですが……」


 そうは言いつつも、徐々に顔を近づけてくるエイナ。


「……エイナ?」

「ごめんなさい、師匠。生きている師匠をもっと実感したいんです」


 言うが早いか――またしてもエイナから口づけをされた。

 ――先ほどのレオラの言葉の意味が理解できたかもしれない。


「――ちょ、ちょっと、エイナ! キスばっかりしすぎじゃ……!?」

「これもあれですよ、あの……必要なんです!」

「何に!?」

「魔力の調整? みたいな……とにかく必要なんですよ!」


 ルリィに代わるほどの凄腕魔術師になったはずのエイナだが――どう考えても分かる嘘を吐いてまで、どうやらルリィとキスをしたいらしい。

 五年という月日は、人を成長させるには十分な月日だ。

 だが――やはり思っていたように成長するとは限らない。

 もっと落ち着きのある女性になるかと思っていたエイナは、ルリィを押し倒しては言い訳しながらも口づけをするキス魔になってしまていたのだから。


「大丈夫です。師匠が抵抗しなければすぐに終わりますから……!」

「そういう問題じゃ……ちょっと、待――」


 結局、静止を聞くこともなくエイナはルリィと何度も口づけをかわす。

 弟子に愛されるのはいいことなのかもしれないが――あまりにも愛が重すぎる気がする。

 ただ、何度か口づけをされるうちに、悪い気はしなくなっているのは気のせいだと思いたい。

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英雄と呼ばれている魔術師だけど、転生したら成長した弟子からの愛が重すぎる 笹塔五郎 @sasacibe

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