【書籍化】VRゲームから勇者召喚されました。ボクだけ大型アップデート実装済みだったので無双確定です?
夢・風魔
第1章
第1話
「凍てつく吐息――咲き乱れろ――美しき氷晶――」
唱える呪文に合せて、僕の足元に魔法陣が浮かび上がる。
同時に視界丈夫に浮かんだ詠唱ゲージが……溜まった。
「ダイヤモンドダスト! ――天の怒り――地を焦がす雷よ――ライトニングプラズマ!」
凍結状態になったモンスターは、雷属性のダメージが五割増しになる。
しかもライトニングプラズマには、確率で感電効果付き。感電すれば痺れて、三秒動けなくなる。
取り巻きはこれで確殺っと。あとは。
「全てを焦がす灼熱の太陽――爆ぜよ――ハースト・フレアブレイズ」
『グオオォォォォォ……ォ……』
禍々しい色の巨木が炎に包まれ、次の瞬間、爆発した。
それと同時にシステムメッセージが浮かぶ。
【ネームドユニークモンスター、漆黒の森の番人・カオスウッドツリーの討伐に成功しました】
【漆黒の森の番人・カオスウッドツリーの討伐数が百体になりました】
【称号『森の再生を願う者』を獲得】
【森エリアでのHP・MPの自然回復量が5%上昇します】
「自然回復量のアップか。悪くな――」
「くそっ。また貴様かイツキ! いつもいつもいつもいつも、俺様の獲物を横取りしやがって!」
横取りって……早い者勝ちなのに。
「なんでネームドレーダー使ってる俺様より先に番人見つけてんだっ。てめぇ、やっぱり不正行為してんだろっ」
「なんとか言えよイツキ!」
「……――テレポート」
「あっ、て――」
僕は狩場のデータを個人的にずっととってある。五年間、ずっとだ。
そのデータをもとに、ネームドモンスターの出現場所を予想しているだけに過ぎない。
むしろ運営から禁止されている外部ツールのネームドレーダー使ってる方が不正行為なのに。
「システム、今の時間は?」
【ただいまの時刻は、午前九時四十九分です】
【メンテナンス開始まで、あと十一分です】
【データ保護のため、早めのログアウトをお願いいたします】
急がないと。
待ちにまった『転生システム』の実装だ。
すぐ転生できるように、NPCの前で待機――と言いたいところだけど、事前にNPCがどこに配置されるか公開されていない。
だけどヒントはある。
アップデートに先駆け、先々週から一部のNPCの会話が徐々に変わってきたんだよな。
その会話から転生NPCの位置を……。
【Fromあずき:やほーイツキくん】
あずきさんだ。
この『ワールド・リメイク・オンライン』で初めてできた知り合いであり、狩り友。
まぁ知り合いなんて両手で数えて余る程度しかいないけど。
【Fromあずき:メンテのあと少し遅刻すると思うんだけど、インしたらNPCの場所教えてもらっていい?】
【Toあずき:もちろんです。条件とかあったらそれもお伝えしますね】
【Fromあずき:やった~ありがとう!】
【Fromあずき:転生したらモンちゃんたちも呼んで一緒にレベリングしよ】
【Fromあずき:あ、でもイツキくん、その頃にはもう転職までしちゃってるよね】
【Toあずき:いいですよ。やりましょう】
【Fromあずき:ほんと!? じゃあレベル1から食べられる料理、今からそっちに転送しておくね】
【Fromあずき:またあとで~】
料理! うっかりしていた。
インベントリにある料理、全部レベル90台じゃないと使えないものばかりだ。
レベルがリセットされるからこそ、料理によるステータスボーナスの影響は大きいだろう。
ピコンっとシステム音が鳴って、あずきさんから料理が送られてきた。
さらにピコン。さらに……いったいいくつ送ってくれる気なんだろう。
チャットをしている間に、目的地である旧教会跡に到着した。
ここは山間の小さな町エルダ。プレイ初期の頃にクエストで一、二度訪れる程度で、周囲に特に旨い狩場がある訳でもない。ここを拠点に活動するプレイヤーは皆無ってぐらい、寂れた町だ。
その町外れにある、瓦礫の山の前に立つ。
「ずっとただの廃墟だと思っていたけど」
百年前に起きた災厄で瓦礫と化した教会だってのが、つい昨日の夜、NPCの会話に追加された。
それまで三カ所ほど候補地があったけど、昨日のNPCの会話でここだって思ったんだ。
【まもなくメンテナンスの開始時刻になります】
【データ保護のため、早めのログアウトをお願いします】
予想。当たってくれ。
ピピピピ――とアラームが鳴る。
午後一時五十九分。
メンテ終了一分前だ。
既にリクライニングのVR機に座って、ヘッドギアも装着してログイン画面を出して待機中だ。
この一台五千万円の超高速回線を可能とするVR機なら、大容量のクライアントデータだって三秒もあればダウンロードできる。
アップデートパッチ程度なら一秒だろう。
あとは時間ピッタリに画面を更新して、ダウンロードボタンを押すだけ。
三……二……
『急いで……急いでください……』
え?
「うわぁっ、更新!? あ、してた。ログイン!!」
【アップデートを開始しますか?】
YES!
【アップデートを開始します】
ん、少し時間かかってるな。
一斉に何万人とサーバーにアクセスしているから、少しは遅くなるか。
よし、アップデート完了っと。
「ログイン!」
『急いでください……その時はもう間もなくです』
この女の人の声、演出……かな?
つまり、もう始まっているんだ。転生システムは。
それまでのレベルをリセットし、また初心者からスタート。
違う職業に転職可能だが、基本ステータスはそのまま引き継げる。レベルが上がれば転生前のスキルも使用可能だ。
これで戦闘の幅がぐんと広がる。
それが転生システムだ。
ログインすると目の前の廃墟には、ログアウト前にはいなかったNPCの姿があった。
色褪せた法衣を着たおじいさんだ。
ビンゴ……かな?
「おや、こんな辺鄙な場所に冒険者とは……よろしければこの年寄りの話を聞いてくださらんか?」
ここで選択肢が出る。
【話を聞く】
【立ち去る】
当然ここは【話を聞く】――だ。
「かつてここには、女神フローリアが愛した教会がございました」
そこからの会話は他のNPCから聞いた内容と似ている。
さらに百年前の災厄にも触れているけど、その辺りは公式サイトにあるストーリー概要と同じだ。
飛ばしたいけど、会話のスキップは不可。
最後まで話を聞くと――
「女神の信徒よ。もし更なる力を手にし、この世界に平穏をもたらすのであればお力を御貸しいたしましょう」
という会話のあとに選択肢が浮かんだ。
【転生しますか?】
【会話を終了】
するに決まっているじゃないか。
「転生します」
「ありがとう、勇者よ。どうかこの世界を、災厄から救ってください」
災厄から?
でもそれは百年前――うわっ、眩しい!
視界が真っ白になって、何も見えないぞ。
…………やっと、やっと目が見えるようになって。
「え?」
さっきのおじいさんは?
それよりもここは――エターニア王国の王城じゃないか!?
「よくぞ参られた、異世界からの勇者よ」
んん?
い、異世界からの勇者あぁ!?
いつからこのゲームは、異世界転移ものになったんだ!?
************************
以前投稿していた作品
異世界に転移したけど僕だけゲーム仕様~公式ショップが使えてチャージし放題!つまりこれは無双確定!?~
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893262163
こちらの設定を使い、キャラ&ストーリーを一新した作品となります。
内容はまったく別物ですので、こちらも応援して頂けると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます