第8話 持つべき友はウンタラカンタラ
教室が静寂に包まれた。
俺の雄叫びのような声がこの場の空気を飲み込んだと思うと、謎の優越感に……とか言っている場合ではない。
このような空気感の時は、時間が経てば経つほど不利になる。そのため、迅速な対処が求められる。しかし、俺はそんなに器用な人間ではないのだ。だって、柳沢さんに体調を聞いたことさえ奇跡な男だぞ?
俺がこんな咄嗟の事態に対処できるような器を持ち合わせているわけがない。
というわけだから、柳沢さんの援助を期待するしかない。
一挙一動で何が起きるかわからない異常事態の中、俺は柳沢さんの方に頭を動かした。クラスみんなの視線が俺の頭の動きに注目していることが肌で感じられる。
『助けてくれ!』
そのような強い思念を送りながら、俺の目の中に柳沢さんを入れていく。
『ぶっははぁぁぁ!』
そのような強い嘲笑を感じる動きを、柳沢愛香という女はしていた。
まず、机に突っ伏した状態に戻っている。これは寝ているわけではないことは、一目瞭然だ。なぜって? 耳がすんごく赤いのだ。おそらく、声を抑えるのに必死すぎて、顔が真っ赤になっていると思われる。耳まで真っ赤になるぐらい、声を抑えている。ふざけるな。そして、全身が小刻みに震えている。
そりゃあもう、誰が見ても、「あ、こいつは笑うのを必死に堪えているんだなぁ……」と思ってしまうぐらいには、露骨でわかりやすい動きをしていた。ふざけるな。
ちくしょう! 俺に頼れる友がいたら……もしくはクラスに知り合いの一人でも作っていれば、笑って済まされるようなことなのに!
たったそれだけのことなのに! 俺は! 今までクラスの奴らと関わろうとしてこなかった! 例外は二人いるけどなぁ!
ん? ふた、り……?
「おっはよう、諸君! 今日もいい天気だなぁ! なっはは……って、どうしたの? なんで、八嶋の野郎が注目の的になってんの?」
いったぁぁぁぁぁ!
頼れる友! いったぁぁぁぁぁ!
俺と彼女の“恥ずかしい秘密” 清水叶縁 @haruharu_432
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