【2025年7月、大津波は起きなかった】 青月 日日さま自主企画参加作品
楠本恵士
2025年7月、大津波発生
【2025年7月、大津波は起きなかった】
青月 日日さま自主企画参加作品
予言されていた通りのコトが起きた……ある者は起きないことを願い、ある者は反対に自分だけは無事な場所での、壊滅的な悲劇を望む……予言されていた通りの人災が起きてから半年後──二人の男が冷房の無い安いアパートで、ノンアルコールのビールもどきを飲みながら会話をしていた。
「そう言えば、あの災害が起きた日も、こんな暑い日だったな」
「そうだな」
ランキングシャツ姿の男たちは、あまり冷えてないスイカを食べながら、ぬるいノンアルコールビールを飲む。
暑さを増幅させる、セミの声が聞こえてきた。
「暑いな」
「そうだな」
「オレたちは運が良かったな、内陸に住んでいたから……あの悪魔の津波被害に遭わなくて」
映像で見た、恐ろしいほどの高さまで盛り上がった海面から発生した、十メートルを軽く越える超津波の映像……高層ビルの高さの半分が飲み込まれ、あらゆるモノが流され。そして海に引き寄せられていく恐怖の映像。
助けを求めて、悲鳴を発する車。
濁流に呑み込まれ消えていく人間。
形容し難い悪夢の人災だった──聖書のノアの方舟の災害を連想させる、
津波が押し寄せた太平洋側で、高台に居住地が建設されていなかった漁村には
太平洋側で水没するミクロネシアの島々もあった、大国の太平洋側の海岸も、無傷ではすまずに都市が壊滅した。
人災の超津波は、禁断の兵器を使用した大国に対しても、平等で見逃してくれなかった。
スイカの種を飛ばしながら男が言った。
「それにしても、脅しで禁断の兵器を海底で爆発させた、二大大国もバカだよな……まさか、海底で眠っていた巨大生物を目覚めさせて、怒りを買うなんて……本当にバカだ」
二大大国が、互いを牽制するために海底爆発させた海域には太古の巨大生物が眠っていた、目覚めた巨大生物は禁断の爆発物の高エネルギーを吸収して、さらに巨大化して海面を盛り上がらせて発生させた悪魔の津波が、遠く離れた各国の沿岸にも押し寄せた。
「しかし、7月の予言を的中させた占い師もさんざんだな、当たっても文句を言われ、これで当たらなかったらまた文句を言われたんだろう」
「人間は勝手なモノだからな」
冷蔵庫から持ってきたアイスキャンデーをナメながら、男たちが会話を続ける。
「目覚めさせてしまった古代生物が、沿岸の国に上陸して破壊を繰り返すようになってから、国家間の争いはなくなったな」
「いつ自分の国に、巨大生物の被害が起こるか不安だからだろう……人間同士が争っていてもしかたがないから」
「最近では他にも目覚めて活動を開始した古代生物がいるらしいぞ……翼竜みたいヤツとか、昆虫みたいなヤツとか、巨大猿人みたいなヤツとか」
「マジかよ、そんなヤツらが復活していたんじゃ海から離れている国も、安心できないな」
男の一人が、少しばかり未来が見える友人に聞いた。
「オレも、生物災害の津波とかで死ぬのかな? 今度、海の近くに引っ越すんだけれど……苦しみながら死ぬのはイヤだな」
予知力が少しばかりある男が、知人の顔を見ながら言った。
「大丈夫だ、おまえは苦しんで死ぬコトはないから」
「本当か」
「あぁ、一瞬で蒸発して、死んだコトにも気づかないまま、壁に影が残るだけだから」
~おわり~
【2025年7月、大津波は起きなかった】 青月 日日さま自主企画参加作品 楠本恵士 @67853-_-
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