オリーブ

Rie

―静けき午後に満ちるもの―

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丘のなだらかさに

こぼれる陽射しが

静かに揺れていた


なだめるような風が

細く、銀に光る葉を撫で

まだ青い果実が そっと頷く


誰にも見つからぬように

水面に影を落とすその枝は

ひとの痛みを吸って 甘くなる


きみの掌のかたちに似た

小さな葉先が

一滴のやさしさをこぼしていた


その実が ひらくとき

たとえ すこし苦くても

胸の奥に 灯がともるようで


誰かを思い出す

いつかの午後の香りがした


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オリーブ Rie @riyeandtea

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