第5話 お嬢様が入れてもらいたそうに見つめてくる 2
うぅっ。
根負けと上目遣いと可愛さに負けてしまうとは予想外だ。普段、真琴以外の女子に迫られることがないだけに妙に焦ってしまった。
「……ここが真琴のお家なのですね!」
そう言って西大路さんは、両手を重ねながら部屋の壁やら柱を見回している。
フローリングに直に座っているが、俺が案内したリビングチェアに座るのを頑なに断った結果だ。
もしやお嬢様特性で安いか高いかを瞬時に見分けるスキルがあるのだろうか……などとアホなことを考えるよりも先に、無防備な素足を見せながら足を崩したお嬢様座りをされると俺としては何も言えなくなる。
それはそうと、真琴が何をどう言ってここに招いたのかだけは訊いておかねば。
「いや、俺の家ですよ」
「聞いてないです」
言葉足らずのお嬢様なのは知っているが、俺に厳しいのは気のせいか?
「そう言われても俺の家なものは家なので……」
俺の家じゃなくて真琴の家だから入りたかったんだろうが、じゃあ何で俺が勝手に真琴の家に入らせたんだって話になると思うんだが。
「お部屋があるんですよね?」
「それはまぁ」
「どこから入れるんですか?」
「……俺の部屋に?」
てっきり真琴の部屋に入りたいとばかり思っていたら俺の部屋か。
「もしここがあなたのお家なら、ご自分のお部屋の一つや二つはありますよね? それを確かめたいです」
自分の部屋が二つもあるほど家はでかくないが、疑われているのは良くないし見せるしかないんだろうな。
「俺の部屋に入れたら納得してくれるのかな?」
「もちろんです!」
「それならこっちですよ。俺についてきてくれれば……」
真琴を訪ねてきたら俺がいて、俺の家だった件。それが信じられなくて部屋を見せろとか、強引なお嬢様だな。
そういや、お嬢様などと言っているが――
「――西大路さんはイギリス育ちで名門出のお嬢様……で、合ってるのかな?」
「パブリックスクールに通っていたです。11歳くらいからの一貫校で、でも途中でお仕事の都合で帰ってきたです」
よくは分からないが本物みたいだ。
「孝純さんのお部屋はここですか~?」
「待って! そこは違うから!」
その前に、俺の部屋には女子に見せてはいけないものが散らかっていたような気がするな。あらぬ誤解をされると厄介だし部屋の前で待っててもらうか。
「こ、ここが俺の部屋だけど、少しだけ待っててもらえるかな?」
「ネームプレートも何もないです」
「そういうのは特につけてないかな」
「……期待してなかったです大丈夫です」
ネームプレートか。あとでつけておくとしよう。
……というわけで部屋の前で西大路さんを待たせている間に、部屋の壁に貼りまくっていたセクシーなコレクションポスターを無事に剥がすことが――出来るわけがなく、俺は部屋の前にいる西大路さんに断りを入れることにした。
「え? 入れてくれないんですか? どうしてですか?」
「い、いやぁ、とてもじゃないけどお見せできるレベルには達していないというか、やはりいきなり家に入れて俺の部屋に入れるというのはおかしいかなと思って、なのでごめん、無理です」
「……お部屋の前に案内してくれたのにどうしても駄目……?」
おそらく西大路さんの自然なお願いポーズなんだろうが、それにしたってあざとすぎやしないか?
それに、初めての自宅訪問で初めての男子部屋は普通じゃない。俺の部屋よりも真琴の部屋に入れてあげるのが自然だろう。
じっと俺を見つめてくるが、だからといってって話になる。だが、誰もいない家の中に入れてあげている時点で分が悪いのは俺の方だ。
俺が観念するしかないんだろうな。
「…………一瞬だけでいいなら」
「わぁ~!」
くっ、可愛すぎか!
「孝純さん」
「は、はい」
「どうして露出した女性が沢山飾られているんですか~?」
「えーと……それは~」
しまったな、ポスターに気を取られてフィギュアコレクションが並びっぱなしだった。
「スカート姿の女の子が可愛いです。けど……何ででしょう?」
「うん……ですよね」
深い意味はないが、俺の部屋はほぼオタク部屋である。ミラー仕様の棚に並べてあるものはいいとしても、剥き出しのやつとかポスターの数々は隠しようがないわけで。
「……もしかして、変態さんなんですか?」
「違います!」
「女の子が好きすぎて狂ってるさん……?」
「違……いますね」
現在進行形ではなく中学の頃に集めただけで今はただの趣味部屋なのだが、見せてはいけない人に見せてしまったわけだな。
「生身の女の子は好きですか?」
「それはもう……あ、いや、それが普通なので……」
「じゃあ見ます?」
「……はい?」
すでに目の前にいるお嬢様をそれなりに堪能しているが、いきなり何を言い出しているのかな?
「お部屋に入れてもらいましたし、わたしもお見せしないと帰してくれませんよね……」
何を見せるというのかね?
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