第22話 果たして僕らに食事は必要なのだろうか?(2)



「食材が!道具が!キッチンが!ここにはありまちぇーーーん!!!!!!」


「な、なんだってぇぇぇ!」

「!!!!」


リーリエ先輩の悲鳴が如くの声に僕の声が共鳴した。


「食材がないってどういうことですか!?」


「いや、ほら!わたち達って別に食事を摂る必要はないから、なんか、、、こう、、、、うっかりして、忘れてたんでちゅよ?」


僕の質問に対してリーリエ先輩は目をそらし、しどろもどろに答えた。

僕は不審に思いしばらくリーリエ先輩を見つめていた。


(この誤魔化し方、絶対になんかある!!)ユウが心のなかでそう思うとリーリエがギクリとした。どうやらまた能力を使っていたらしい。


「いえ、キッチンならあったはずですよ」


私は入ったことはありませんが。そう付け足してヨル先輩が言った。


「ヨル先輩、案内してくれますか?」


「はい分かりました。ではこちらに」


ヨル先輩が事務室を出ていく。僕はその後を追いリーリエ先輩も、いやぁ行かなくてもいいんじゃないでちゅか?とかゴニョゴニョ言いながら顔を青くしてついて行った。


歩く、歩く。異世界転生係の廊下は、どこかチグハグな印象を与えた。それもそうだろう係長か?他の先輩がいじっているのか分からないが、様々な文明のものが置かれていたから。


例えば、紅色に黄金色が混ざった魔獣の毛皮で作られたふわふわの絨毯。


例えば、鈍い銀色の光を放っている槍を持った鎧の騎士


例えばなぜか、端っこに置かれている、ユウの身体では絶対に持てそうもない大太刀


などなどといったものが無造作に置かれていた。


興味深く思い周りをキョロキョロ見渡していると、ドン!ヨル先輩にぶつかった。どうしたんだろうとぶつかった鼻をなでながら思っていると、ものすごい悪臭が鼻孔をくすぐった。思わず撫でていた手でぎゅっと摘んだ。この悪臭は今まで嗅いできたものの中でぶっちぎりのトップを誇った。卵が腐った匂い、焦げた匂い、その中に交じる甘ったるい匂い。最悪だった。


「先輩、私はまだキッチンの扉を開けていません。それなのに廊下まで漂ってくるこの悪臭は一体何ですか?」


ヨル先輩はリーリエ先輩に問いかける。リーリエ先輩は困ったように笑い


「扉を開けたら分かりまちゅよ」


とだけ答えた。ヨル先輩と僕は覚悟を決めた。ヨル先輩がかすかに震える手先で扉を引こうとした。

僕は両手で口と鼻をきっちり塞いだ。扉が開かれた時、口と鼻を片手で抑えたとしても最初に悪臭を浴びたヨル先輩は、少し後ろに下がり、その場でへたり込んでしまいピクリとも動かなくなってしまった。僕も最初は耐えれたが次第に肺へ供給する酸素が足りなくなってしまい、そーっと息を吸ったが、ヨル先輩の二の舞いだった。ヨル先輩の隣に倒れ込んだ。


ただ一人リーリエだけはなんとも匂いをなんとも思っていないようで、照れたように笑っていた。

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