何の才能もない農民だった俺が、日本の上級国民の御曹司に転生した件~せっかく異世界に転生したんだから、成金チートでJkグラビアアイドルたちとスローライフを満喫します~

雪風

プロローグ:「農民死亡のお知らせ」


俺の名はジーク。

領主様の畑を耕すしがない小作農。いわゆる社畜だな。そんな俺の人生…いや、俺の住んでる世界は、はっきり言ってオワコンだ。


理由は単純。

この世界が超排他的な格差社会だからだ。

魔法を使える者、スキルのある者、レベルの高い者が政治や経済を牛耳って、社会のトップヒエラルキーに君臨している。


コイツらのほとんどは所詮、親から才能を受け継いだだけに過ぎない。魔法使いの7割が両親ともに魔法使いだし、スキル保有者の8割が両親どちらかがスキル保有者た。

レベルなんてもっと悲惨だ。

レベルを上げるのに必要な経験値、というかその経験値の吸収率は人それぞれ異なる。

吸収率が高い人と低い人の差はなんと13倍以上になる。


レベルや魔法、スキルのあるこの世界では、"努力"というものはなんの役にも立たない。

より正確に言うなら、努力とは才能のある人間が、その才能をさらに伸ばすためだけにある。


努力とは才能のある者たちだけの専売特許だ。

俺みたいになんのスキルも魔法も使えず、レベルもまともに上がらない一般人からすると、この世界はあまりにも残酷、不平等だった。


いわゆる才能のある奴らは俺らみたいな才能のない人間たちにこう言うんだ。

「スキルや魔法、レベルアップ――努力すれば報われる社会で、なんで努力しないんだ?お前の人生が苦しいのは"努力"してないからだ」ってな。


そう言いながら、有名人やスターへと成り上がった魔法使いや冒険者たちは自身の成功体験を本にまとめて出版したり講演会を開いたりするんだ。


でも俺から言わせてもらえば、それはお前らが単に"運が良かった"だけに過ぎない。努力が実を結ぶ環境に生まれてきただけだ。

なんの再現性もない、傲慢な考えだ。

所詮世の中は運ゲー。魔法やスキル、才能ガチャで人生が決まる。努力なんで疲れてめんどくさい、コスパ最悪なだけだ。


と、文句をたれたところで、俺の苦しい現実は変わらないけど…。


結局、なんの才能もない俺は、このままなにもチャレンジできず、なにも成し遂げられず、人の下で小作農としての人生を終えるんだ。


だから俺はずっと夢を見ていた。

"つぎ生まれ変わったら、魔法もスキルもレベルもない、自由で平等な異世界に転生するんだ!ってな"


でもこの考えは俺だけじゃない。

俺と同じ世代の若者たちの多くも同じだ。


だから俺等の世代では、いわゆる【異世界転生】ものの小説や童話が最新のトレンドだった。

まぁ俺は文字が読めないから、友人のジャンに読んでもらうだけだけど。


魔法やスキル、レベル、モンスターや勇者、魔王、エルフやドワーフなんて存在しない。


そのかわりに科学っていうファンタジーな異世界。

魔法がなくても空が飛べて、高速で移動できる乗り物があって、レバーを引くだけで自動で種まきをしてくれる機械があって。引き金を引くだけで簡単にモンスターを倒せる武器があって、仕組みはよくわからないけどボタンを押せば部屋の光がついて、きれいな水をいつでも飲めて、遠い異国の料理をいつでも食べれて…。


なにより、みんなが貧富の差もなく学校に行けて、勉強ができて、才能に縛られず、好きな場所で働ける。


魔法とかスキルとか、レベルとか、生まれた時から決まってる才能で人生が成功するかしないが決まる、そんな不公平で残酷な世界じゃなくて、


自由で、平等で、すべての人たちに公平なチャンスがあって、努力が報われる。


そんな異世界転生を――。 

できたら良いな、って。

毎日、藁の布団に包まりながら、寝る時に妄想するんだ。


そんなのなんの意味もない。ただの現実逃避だって分かってても、つらい現実から目を逸らしてしまう。そうしないと生きられないから。


だから、まさか思わないだろ。

それが現実なるなんて。


そうだ。俺は死んだんだ。

死因は突如飛来したドラゴンの脱糞に潰された圧死。


領主様の畑を耕してる時のことだった。急に空が暗くなって、上を見上げたら空を羽ばたく天空の王者の姿。そしてその下腹部当たりから落ちてきた茶色い巨岩。いや、うんこ。


ドラゴンのウンコは像と同じぐらいの大きさと重さがある。だからそれを見た時、俺はすべてをあきらめた。


俺はうんこの臭いに包まれながら死亡した。

社畜の俺らしい最期まで惨めな死に方だ。


でもそんな俺にも幸運が訪れたんだ。



「あなたは死にました。ドラゴンの糞に…潰されて…不幸な死に方をしたあなたを、神は憐れんでいらっしゃいます」


そして今に至る。

死んだと思ったのに、気づいたら真っ白な空間にいた。その真ん中には、微笑みを浮かべながら佇む、純白の翼の生えた一人の女性。


一目で神の神託を伝えると大天使カブリエルだって気づいた。だって、この光景は異世界転生ものの童話で何回も目にした光景だったから。


「神はあなたが望むのなら、異世界に転生させ、もう一度人生をやり直しても良いと言っておられます。どうされますか…?」


「もしかして…その世界は銃と科学のある異世界ですか?レベルもモンスターも存在しない…」


俺がそう聞くと、天使は驚いた様子で俺のほうを見つめてきた。


「え、ええ…そうですが…もし嫌でしたらあなたの住んでいた世界と同じように、剣と魔法の異世界もございますが…」

「いえ、銃と科学の異世界でお願いします!」


俺は食い気味に即答した。


「分かりました。それでは異世界の日本という平和な国に転生させます。時刻は向こうの世界の暦で西暦2000年です」


西暦2000年がなにかはわからないけど、2000年ってことはかなり文明が進んでいるのかもしれないな。


「その…」

「はい、どうされましたか?」


俺は少し遠慮しながら天使に聞いた。


「記憶とかってそのまま引き継いで転生できますか?あと生まれる家庭も選びたいんですけど…」


「記憶の引き継ぎはできますが…生まれる家庭ですか…」


天使は少し困った表情で口を閉ざした。


「………了解です。いま神にお伺いを立てましたが、詳細な条件は無理だが、条件を提示してくれば、できるだけ配慮するとのことです」


「分かりました。ありがとうございます」


俺は丁寧にお辞儀しながら、心の中では飛び跳ねながらガッツポーズを決めた。


「じゃあ日本でチート級の金持ち名家の御曹司に転生させてください!」


こうして俺は、魔法もスキルもレベルもない。

剣と魔法じゃなくて、銃と科学が存在する、自由で平等な、努力が報われる異世界に転生した。

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