「パン」デミック
間貫頓馬(まぬきとんま)
「パン」デミック
いつもの同居人との会話である。
「明日の朝はあの小麦から出来ているふわふわのやつが食べたいな」
「いいね、そうしよう」
先日近所のお店で買ってきたあれのことを思い出し、提案する。「トーストしてバターを乗せて食べるのがおすすめだよ」と店のひとに教えてもらった。想像するだけで今から腹の虫がなりそうだ。
「ところでそろそろ動物園からいなくなるんだっけ。あの白黒のかわいい生き物」
と、同居人。
「そうらしいね。いなくなる前に見に行きたいけれど、混むかなぁ」
「どうだろう。そもそもいっぱ……っ、ええと、動物園の関係者じゃない人への公開はやっているのかな」
「や、やってたはずだよ。たしか」
あぶなかった。ギリギリセーフ、といったところか。
数秒の沈黙の後、居心地悪そうにしていた同居人がすっと立ち上がる。
「じ、じゃあお風呂入ってこようかな! 着替えは用意したし、あと、そうだ。僕のパンツど」
「あっ」
ぱぁん。
同居人の頭が破裂した。
パン、と言ったらその人間は訳もなく意味も分からず破裂するらしい。
これは数か月前から日本で確認されている現象である。まったく厄介なものだ。
頭が破裂した同居人の遺体を見ても、正直あまり動揺することはない。
それほどまでにここ数か月で発生した「パンと口にして頭が破裂した人間」は多かった。見慣れてしまうほどに。
ひとまず警察、あれ救急車か? いや何か特設窓口みたいなのが出来たって聞いた気もするが……。特設窓口、ねぇ。
「まあこんなに頻繁に、あっ」
「パン」デミック 間貫頓馬(まぬきとんま) @jokemakoto_09
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