自称・田舎ギャルの湯川さん

小阪ノリタカ

第1話 ギャルの湯川さん

 俺の名は「黒崎蓮くろさきれん」東京生まれ・東京育ち。

つい、先日まで東京都内の高校に通っていた。


だが、親の仕事の都合により、今日からこの「県立湯川高校けんりつゆかわこうこう」に通うことになった。


周囲にはコンビニすら見当たらず、人ともあまりすれ違わない。登校中によくすれ違ったのは、サギやカモ…そして牛。人間より、動物の方がたぶん多い気がする。


「…マジで、どこに来てしまったんだろうか、俺は…」


しかも、この湯川高校の生徒のノリが独特で、学校内の廊下では、魚の話や釣りの話をしているヤツがいると思えば、畑で採れた野菜をみんなに「たくさん採れたから~」と配っているヤツもいる。

この地域では当たり前の光景なのかもしれないが、転校してきたばかり俺にとっては「戸惑い」と「衝撃」の連続だ。


…で、学校の教室の扉を開けて、一番最初に目が合ったのが――このギャルだった。


「おぉ~!おんしが噂の転校生・黒崎蓮くんけ?えれこったのぉ~!はよこっちゃに座らし!!」


「…え?なんだって??」


派手な髪色にギャルっぽいメイク。でも、このギャルの言っていることが、マジで分からねえ!


「は?なに?おんし?えれこった?…どこの言葉?もしかして、この地域の方言なのか!?」


「あっはっは~、外から来たもんはホンマにおもっしょいの~!」


いやいや、おもっしょいの~!じゃないのよ…。まず、会話が成立してないんだよ!


このギャル、発言が完全に地元のご老人並みに訛りが強い(たぶん)。

同じクラスのヤツらも、このギャルが何を言っているのか、分かっていないような反応を見せている。


「わたしの名前は~、湯川ゆかわひな!ギャルやけぇ、これからヨロピク~☆れんくん♡」


やっとわかる言葉が出てきたと思ったら、自己紹介のクセが強い…!そして、初対面なのに、いきなり名前(れんくん)呼びされた…


だが、この日から田舎ギャル(自称)の湯川ひながグイグイくる生活?がはじまった。

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