第5話 そのキノコ、食べてました

〈基本ステータス〉

体力  999999

攻撃力 999999

防御力 989999(-10000)

知力  999999

魔力  999999


〈スキル〉

電撃耐性 Lv.999

ステータス降下(自己) Lv.5 ★New


---


「……減ってる?」


祐介は自分のステータスを眺め、首をかしげた。防御力が一万だけ減っていた。


「でも……このキノコ、森で毎日食ってたんだよな。甘いほうのやつ」


かご山盛りのキノコが屋敷のテーブルに置かれている。薄緑に白い斑点。

見た目は、どう見てもゲームで見覚えのある“1UPキノコ”にしか見えない。

――が、出てきたリアクションは、想定外だった。


「まさか、それ……即死ダケじゃないの?」


リリアが目を剥く。


「さっき初めて聞いたけど、それ、そんなにヤバいの?」


「ヤバいどころじゃないわよ。王様が暗殺されたのよ、これで!」


「魔族の将軍も、同じキノコで倒れたって記録があります」

ユリアも続ける。しかめっ面のままだ。


「ちょっと待って。俺、これ爆食いしてたけど?三食これだけの時期あったけど?」


「それ、普通にアウトだと思うんですけど……」


「でも、俺、これで飢えをしのいだし、ステータスも爆上がりしたしさ。

勇者増産の材料にすれば、人材増やせるし。俺は社長。勇者は社員。定時退社。完璧じゃね?」


「……どういう理屈よ、それ」


「とにかく捨ててきて!いま!いますぐ!!」


しぶしぶ祐介は異世界干渉を起動する。

適当な異世界をひとつ選び、誰もいない草原にぽいっとキノコを捨てた。


その草原の奥――黒い影がひとつ、ぴくりと動いた。

近づき、落ちたキノコをくんくんと嗅ぎ始める。


――何かが、始まったかもしれない。


「はい、あーん♡」

ユリアが差し出すシチューを、祐介は素直にもぐもぐ食べる。


だが、気になることがひとつ。


〈スキル〉に新しく表示された

**「ステータス降下 Lv.5(自己)」**の文字。


「なんだこのスキル?……今日食ったキノコのせいか?」


少しだけ眉をひそめながら、祐介はその文字を見つめていた。

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