第3話 異世界ラース
異世界ラースは、剣と魔法の世界である。
祐介は、『ダメ大学生が、バイトの帰り道に子供を救うために車にはねられ死亡、勇者として召喚される』というテンプレでこの世界にやって来た。
かれこれ3年この世界に住み、全てのステータスMAXという完全チート無双状態を成し遂げることに成功した。
後は、魔王を倒し一件落着だったのだが、勇者のあまりの強さに自暴自棄になった魔王が自爆。とっさに守ったこの屋敷以外、全てが吹き飛んでしまった。生き残った王女2人は、たまたま屋敷に遊びに来ていたため命を救われたのだった。
現在は、魔王討伐のクリア報酬で手に入った『異世界干渉』のスキルで、地球に行っては買い物をして自宅に持ち帰っている。
便利なのだが、持ち帰ることができるのはスーパーのLサイズ袋に満杯くらいが最大である。重さなのか、容積なのか。いろいろ試してみたがよく分からない。
「リリアとユリアを連れて行けるなら、別の異世界に移り住んで一件落着なんだけどね。」
「地球で王家の再興ですね。」
「う~ん、地球で成功するのは難しいかもな~。魔王いないから勇者必要ないし。」
「え~、地球って、とっても便利そうなのに~。」
2人とも地球に興味津々のようだが、戸籍のない3人で暮らすのは難しいと思う。ましてや、祐介は死んでしまった立場でもある。
「じゃ、とりあえず、どこでもいいから異世界完クリしてくるかな。そうすれば、またクリアボーナスもらえるかもしれないし。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。毎日帰って来るんでしょ?じゃないと食べる物がないんだから。」
リリアが焦って祐介に詰め寄る。
「そうだね、毎日帰ってくるよ。でも、一応買い出しはしとこうか。」
「買い出しに行くなら、DVDもたくさん買ってきてください。祐介さんといちゃラブできないなんて退屈で我慢できません。」
ユリアが提案すると、リリアもお願いしてくる。
「いいわね。私は24時間ピンチがいっぱいのドラマを全部観たいわ。」
リリアはアクション長編ドラマをご所望だ。
あれね………。あれ観始めると寝れなくなるんだよなぁ。中毒になるぞ。
「私は、子ども探偵が推理するやつがいいです。」
ユリアは、人気推理アニメをご所望だ。
今度は、あれね………。前知識なく、この2作を観続けたら、地球なんて恐ろしくて住めなくならないかい?
聞いてみたら、『祐介がいるから大丈夫!』『祐介さんがいるから大丈夫です!』とハモられた。
祐介は毎日帰って来る予定だが、何があるか分からない。地球を5往復し、ご所望のDVD全巻と食材を買ってきた。
こんな生活してるので、特に栄養バランスが大切だ。少しでも身体がおかしくなってしまったら、精神がすぐにやられてしまう。栄養を考えた料理本も買ってきて、『お願いだからしっかり食事をとってね』と伝えておいた。
行き先はいろいろ考えたが、最初にメールが届いた異世界に行くことに決めた。
「じゃ、行ってきま~す。」
抱きついてくる2人とお別れのキスをし、転移する。
転移は一瞬だ。祐介が念じるとメニュー画面が頭の中に浮かんでくる。『異世界干渉』を選び、行く先を選択すると、視界がぐらぐらっと歪み、だんだん鮮明になってくる。
祐介の転移した場所は、何もない広い草原だった。周りを見渡すと、すぐに見覚えのある植物を見つけた。
「やったね、これなら何とかなるかもしれない。」
予約120年待ちの状況に、少しだけ光が見えた。
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