王政宣言

人造人間 歯人

塗炭之憂

俺は炭焼きの家に生まれた、戦前の時代じゃないぞ?現代日本でだ。

だが目立って金銭で困ったことはない、そこまで贅沢はできないが、まあ幸せだろう

小学生の時、誰もが使う鉛筆。親父が焼いた炭で作ってもらった鉛筆が俺は好きだ。

みんながシャーペンを買ってもらい、親父の鉛筆を馬鹿にされても我慢できた。

13の時の春、なんてことのない日、登校中、校門を通り過ぎた瞬間に耳を劈くような音が周囲に響く。

「空襲・・警報・・・?」

俺が理解したのはすぐだった、目の前にあったはずの校舎が消し飛ぶ。

そこには誰かがあげる悲鳴も、逃げる姿もない。人生初めての死の覚悟ってやつか

空にはたった3つの空爆機、しかしそれは、俺にとってあまりにも、大き過ぎた



偶然瓦礫に隠れていたのか、俺は生きた、アメリカと日本の連合軍が救助してくれた、親父は死んでいた、家の工房ごと燃え尽きたらしい、死体も無いそうだ。

俺は保護されてすぐ脱走した、今思えばおかしかった、親父は仕事が忙しいと言いながら飯も食わずに工房にこもり、作業ばかりしていた。

だいたい親父の仕事は依頼されて炭を焼く、ひと月仕事が無いこともざらにあった。あんなに熱心に何を作っていたのか?わからない、心の突っかかりがあった、ずっと、知りたい、知れば取れる気がする、他に何もないんだ、俺には。



足取りが重い、そんな中目の前には燃え尽きた工房、死体も残らなかった?

おかしい、少しは痕跡が残っているはずだ、ほとんど燃えカスになっていたが、妙に綺麗な作業台、だけが残っていた。確かタングステンの作業台で、10万近くしたか?

生活費の足しにしようと運ぼうとするが、重くて持ち上がらない、精々ひっくり返すのが精一杯だろうか?汗だくになりながら何とかひっくり返す、そこにはあったのは木製の床下収納のような扉、直感で分かる、ここに何か在る・・・と

扉を開けると木製のはしご、震える手で降りる。

ずいぶん長いはしごを降り続けて、時間感覚が麻痺してきた頃、やっと足が床に付くそこは打ちっ放しのコンクリートで空気が冷たい、そこにあったのは竃と金床、そして・・・死体、あばらが浮き出て青白い顔をした親父だったんだ。

やはり死体が見つからなかったのは地下に居たからなんだ、恐らく水も飲まず作業をして、力尽きたのだろう、親父の懐に手記を見つける、俺は迷わずにページをめくり、読み始める。



押し入れの中から木箱を見つけた、【宝樹・神薙】その欠片、その性質【変幻自在】文字通り武器にすれば使用者の願うほど伸び、願うほど鋭くなる、鎧となれば願うほど硬く、しなやかに受け流す、しかし数多くの戦争の影響で、そのほとんどが紛失、もしくは力を使い果たし崩壊した。残り僅かな宝樹もアメリカとソ連に強奪された、これを完成させて灯輝に渡そう、あいつは才能溢れるやつだ、俺とは違う

完成させる、≪神の遺物≫の模倣品を——————



手記を閉じ、改めて見ると、冷めきった金床の上に木箱。

「これが・・手記の?」

ふたを開けると、そこにあったのは粗末なつくりの鉛筆・・・

そんな中響く声

「霞野市警だ!誰かいるのか!出てこい!降伏しろ!」

本来焦るべき状況だろうが、なんだ?

冷静だ、親父の鉛筆に力を籠めると、なんだか体が少し浮いたような気がする。

(来るな来るな来るな来るな来るな)   (止まれ!!)

そう念じた時、ほのかに炭の香りがする、足元から炭が広がり、梯子の繋がる穴を塞ぐ。

「なんだこれ!くっそ!あけろ!」

「どいてろ、銃てこじ開ける」

ドドドドドドドドド・・・・ガン!

連続した銃声の後蹴り一発、塞いだ穴をこじ開けられた、半ばパニックの中、強く念じる(入られたらたぶん撃ち殺される 敵?)

(殺す)

穴の方向に鉛筆を向けて、もう一度念じる、先端から炭が突き出し、丁度降りてきた警官一人の頭を貫く、嫌な音が響く。

「なn—————・・・」

「どうした?!」

頭を貫いた炭が枝分かれし、穴を覗いた警官の顔に向かう

「ウ ―――」

声を上げる間もなく喉を貫く。

ふと我に返り、鉛筆から手を放す、すると今まで確かに在った炭の槍が消滅した。

外に出る、外は雨、黒い雨

ああなんてことだ、殺したんだ、俺は、二人。



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